子供の逸失利益|計算方法と基礎収入の決め方や弁護士に依頼すべき理由を解説
子供の逸失利益について、計算方法・基礎収入の決め方・男女差の取り扱いをわかりやすく解説します。子供の逸失利益は収入がなくても請求でき、正しく算定すれば適正な賠償金を受け取ることが可能です。弁護士への相談もご検討ください。
交通事故でお子さんが被害に遭い、次のような疑問をお持ちではないでしょうか。
- 子供は働いていないのに、逸失利益を請求できるのか
- 収入がない場合、基礎収入はどう計算するのか
- 保険会社の提示額が適正かどうか判断できない
実は、子供の逸失利益は収入がなくても請求できます。将来働いて収入を得られる可能性があるとみなされるためです。逸失利益とは「事故がなければ将来得られたはずの利益」を補償するものだからです。子供であっても、その権利は大人と変わりません。
この記事では、子供の逸失利益の計算方法と基礎収入の決め方を解説します。記事を読めば、適正な賠償金を受け取るために何をすべきかが分かります。
目次
子供にも逸失利益は認められる
子供が交通事故で後遺障害を負ったり死亡したりした場合、逸失利益を請求できます。収入の有無は問いません。以下では、逸失利益の意味・請求できる根拠・種類の3点を順に説明します。
逸失利益とは何か
逸失利益とは、交通事故がなければ将来にわたって得られたはずの収入や利益が失われたことに対する損害賠償です。
この損害が認められる理由は、後遺障害が残れば以前と同じように働けなくなり、死亡すれば将来の収入が全て失われるからです。その損失を金銭で補うのが逸失利益の役割といえます。
慰謝料が「精神的苦痛」への補償であるのに対し、逸失利益は「経済的損失」への補償です。両者は別の費目であり、それぞれ請求できます。
収入がない子供でも請求できる理由
収入のない子供でも、逸失利益を請求できます。子供には将来働いて収入を得られる可能性が十分にあるからです。
逸失利益は「現在の収入」ではなく、「将来失われる収入」を補償するものです。そのため、事故時点で無収入であることは、請求を妨げる理由になりません。幼児や小学生であっても、成長して就労する蓋然性が認められる以上、損害として扱われます。
基礎収入の算定には、厚生労働省が公表する賃金センサスの全年齢平均賃金を用います。就労可能期間は、原則として18歳から67歳までの49年間です。
後遺障害と死亡で2種類ある
子供の逸失利益には、以下の2種類があります。
| 種類 | 発生する場面 | 概要 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害が残った場合 | 症状固定後、労働能力が低下したことで失われる将来収入への補償 |
| 死亡逸失利益 | 事故で死亡した場合 | 死亡により生涯にわたって得られなくなった収入への補償 |
後遺障害逸失利益は、症状固定の診断を受けた後に後遺障害等級が認定されることで請求できるようになります。なお、症状固定以降は休業損害の請求ができなくなる点に注意が必要です。
一方、死亡逸失利益は後遺障害逸失利益と計算式の構造は似ていますが、死亡によって生活費がかからなくなる分を差し引く「生活費控除」が適用される点で異なります。それぞれの計算方法は後述します。
子供の逸失利益の基礎収入はどう決まるか
逸失利益の計算において、金額を左右する最大の要素が基礎収入です。子供の場合は実収入がないため、原則・学歴・性別の3つの観点から基礎収入を決める必要があります。それぞれの判断基準を以下で解説します。
賃金センサスの全年齢平均賃金が原則
幼児・児童・学生の基礎収入は、厚生労働省が毎年公表する「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」の全年齢平均賃金を用いるのが原則です。子供には事故時点での実収入がないため、社会全体の平均的な賃金水準を代替指標として用いることが実務上定着しているからです。
具体的には、賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均の賃金額が基礎収入となります。
現実の収入が平均賃金を下回っていても、将来的に平均賃金程度を得られる一定の確実性が認められれば、平均賃金を基礎収入として算定できます。逆にいえば、実収入の低さを理由に逸失利益を低く抑えられるケースは限定的です。
大学進学が見込まれる場合は大卒平均賃金
大学や大学院への進学の蓋然性が認められる場合は、全学歴計の平均賃金ではなく、大卒者の平均賃金を基礎収入として算定できます。大卒者と高卒者では生涯賃金に大きな開きがあり、進学の見込みがある子供に低い基礎収入を適用するのは不公平だからです。
大学に在籍している場合はもちろん、成績や家庭環境などから進学の可能性が高いと客観的に判断できる場合も、大卒平均賃金の採用が認められることがあります。
ただし、一点注意が必要です。大卒平均賃金を使うと就労の始期が22歳(大学卒業時)となり、高卒の場合の18歳より4年遅くなります。就労開始までの期間が長くなる分、ライプニッツ係数から控除する年数も増えるため、結果として逸失利益の総額が学歴計平均賃金を用いる場合より少なくなるケースもあります。
どちらの基礎収入を選ぶかは、個別の事情を踏まえて慎重に検討することが大切です。
女子の場合は男女計の平均賃金を使う
年少女子の基礎収入は、女性労働者の平均賃金ではなく、男女合計の全労働者平均賃金を用いるのが現在の実務上の主流です。
かつては女性労働者の平均賃金を使うことが一般的でした。しかし、女性の社会進出が進むにつれ、年少者には将来多様な就労可能性があるとして、全労働者の平均賃金を採用する裁判例が平成10年頃から増加しました。
最高裁は両方の算定方法を認めており、統一した判断を示していません。実務上の指針となる損害賠償額算定基準は、男女計の全年齢平均賃金で算定するのが一般的と記しています。
賃金センサスでは、男性の全年齢平均賃金が女性を大きく上回っており、両者の差は年間100万円前後に及びます。男女計の平均賃金は、女性単独の数値より高くなり、逸失利益の算定においてこの差は無視できません。
なお、男女計の平均賃金を適用できる年齢範囲については、少なくとも高校卒業までとする裁判例が近年は多い傾向です。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
後遺障害逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益は、3つの要素を掛け合わせて算出します。子供の場合は就労の始期が大人と異なるため、計算式の組み立て方にも特有のルールがあります。計算式・各要素の意味・具体的な計算例の順に見ていきましょう。
計算式と3つの構成要素
後遺障害逸失利益の計算式は次の通りです。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
3つの構成要素をそれぞれ説明します。
【①基礎収入】
子供の場合は前述の通り、賃金センサスの全年齢平均賃金を用います。大学進学の蓋然性や性別によって、採用する数値が変わる点は既に確認済みです。
【②労働能力喪失率】
後遺障害等級ごとに定められた割合で、事故前と比べてどれだけ働く能力が失われたかを数値化したものです。主な等級と喪失率を以下に示します。
| 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
| 1〜3級 | 100% |
| 5級 | 79% |
| 7級 | 56% |
| 9級 | 35% |
| 12級 | 14% |
| 14級 | 5% |
実際の算定では、年齢・職業・後遺障害の部位や程度なども考慮されます。
【③ライプニッツ係数】
将来受け取るはずの利益を現時点で一括受領するため、その間に生じるはずの利息分を差し引く係数です。就労可能期間(原則67歳まで)に対応する数値があらかじめ定められており、表を参照して用います。2020年4月1日以降に発生した事故には、法定利率3%に基づく係数を適用します。
労働能力喪失期間の始期は18歳
子供の労働能力喪失期間は、18歳から67歳までとして計算するのが原則です。これは、子供が就労を開始できる年齢を18歳と仮定するためです。大学進学を前提とする場合は、卒業時(22歳)が始期となります。
18歳未満の子供が症状固定を迎えた場合、ライプニッツ係数を求める計算式は次の通りです。
【(67歳-症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数 - (18歳-症状固定時の年齢)年のライプニッツ係数】
18歳になるまでの期間は就労していないとみなすため、その分の係数をあらかじめ差し引く必要があります。
むち打ち症の場合は時間の経過とともに症状が和らぐと考えられることが多く、後遺障害12級では10年程度、14級では5年程度に喪失期間を限定する裁判例が多い傾向です。
計算例:9歳男児・後遺障害7級の場合
具体的な数値を当てはめて計算してみます。ここでは、9歳の男児が交通事故で高次脳機能障害を負い、後遺障害等級7級4号が認定されたケースを想定しました。
【設定条件】
| 項目 | 内容 |
| 被害者 | 9歳男児(症状固定時) |
| 基礎収入 | 560万9,700円(令和元年賃金センサス・男性・学歴計・全年齢平均) |
| 労働能力喪失率 | 56%(後遺障害7級) |
| ライプニッツ係数 | 19.545 |
【ライプニッツ係数の求め方】
就労始期を18歳とするため、次の計算で差引後の係数を求めます。
67歳-9歳=58年のライプニッツ係数:27.331
18歳-9歳=9年のライプニッツ係数:7.786
差引後:27.331-7.786=19.545
【逸失利益の計算】
560万9,700円 × 0.56 × 19.545 = 約6,140万円
9歳という年齢で重い後遺障害が残った場合、就労可能期間が長い分だけ逸失利益は大きくなります。適切な等級認定と正確な算定が、最終的な賠償額を大きく左右するのです。
死亡逸失利益の計算方法
死亡逸失利益は後遺障害逸失利益と比べ、生活費控除が加わる点が異なります。以下で詳しく見ていきましょう。
計算式と生活費控除率
死亡逸失利益の計算式は次の通りです。
基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
後遺障害逸失利益と異なるのは生活費控除が入る点です。生存していれば必要だった生活費が死亡によって不要になるため、その分を差し引く仕組みになっています。
控除率は被害者の家庭での立場によって異なります。子供の場合は独身・幼児と同様の扱いとなるため、以下の表が目安です。
| 被害者の立場 | 生活費控除率 |
| 一家の支柱(被扶養者1人) | 40% |
| 一家の支柱(被扶養者2人以上) | 30% |
| 女性(主婦・独身・幼児等) | 30% |
| 男性(独身・幼児等) | 50% |
子供が死亡した場合、男児は50%、女児は30%が控除率の目安となります。女児の控除率が低い分、死亡逸失利益の額は男児より高くなる傾向があります。
計算例:4歳男児の死亡逸失利益
4歳の男児が交通事故で亡くなったケースを例に、死亡逸失利益を計算してみましょう。
【設定条件】
| 項目 | 内容 |
| 被害者 | 4歳男児 |
| 基礎収入 | 569万8,200円(令和5年賃金センサス・男性・学歴計・全年齢平均) |
| 生活費控除率 | 50%(男性・幼児) |
| ライプニッツ係数 | 16.860 |
【ライプニッツ係数の求め方】
67歳-4歳=63年のライプニッツ係数:28.156
18歳-4歳=14年のライプニッツ係数:11.296
差引後:28.156-11.296=16.860
【死亡逸失利益の計算】
569万8,200円 ×(1-0.50)× 16.860 = 約4,803万円
なお、実際の賠償金は逸失利益のみではありません。死亡慰謝料(弁護士基準で約2,000万〜2,500万円)や葬儀費用(原則150万円)も合わせて請求できるため、総額は7,000万円を超えるケースもあります。算定は個別事情によって変わるため、弁護士への相談を検討してください。
子供の逸失利益を弁護士に依頼すべき理由
子供の逸失利益は算定が複雑な上、保険会社の提示額が必ずしも適正とは限りません。以下では3つの観点から弁護士に依頼すべき理由を紹介します。
保険会社の提示額は低くなりやすい
保険会社から示談金の提示を受けても、すぐに応じるのは禁物です。提示額は自賠責基準や任意保険基準に基づくことが多く、弁護士基準と比べて低くなる傾向があります。
子供の逸失利益は金額が大きくなりやすい項目です。基礎収入の算定方法や労働能力喪失率の判断次第で、最終的な賠償額は数百万円単位で変わることもあります。示談前に弁護士へ相談し、提示額が適正かどうかを確認しましょう。
弁護士基準で大幅増額できるケースがある
弁護士に依頼することで、保険会社の提示額から大幅に増額できるケースがあります。弁護士は裁判例を根拠とする弁護士基準で交渉できるからです。
交通事故では、後遺障害等級の認定内容や基礎収入の算定方法によって、逸失利益の金額が大きく異なります。保険会社は裁判を避けたいため、弁護士が介入すると弁護士基準に近い水準での解決につながりやすくなるでしょう。
当法律事務所では、交通事故案件を累計300件以上手がけ実績も豊富です。子供が被害者のケースも含め、適正な賠償金の獲得に向けて尽力します。
弁護士費用特約で実質無料の相談も可能
「弁護士に頼むと費用が高くなるのでは」と感じる方も多いですが、弁護士費用特約があれば多くのケースで実質無料で依頼できます。
弁護士費用特約とは、交通事故の示談交渉にかかる弁護士費用を加入中の任意保険会社が負担する制度です。上限300万円まで補償されるため、費用を気にせず依頼できます。ご自身だけでなく、同居する家族や別居の親が加入している場合も特約の対象です。
まずは加入中の保険証券を確認してみてください。特約がついていれば、初回相談から解決まで実質無料でサポートを受けられる可能性があります。
まとめ|子供の逸失利益は弁護士に相談を
本記事では、子供の逸失利益について以下の点を解説しました。
- 収入がない子供でも、将来の就労可能性を根拠に逸失利益を請求できる
- 基礎収入は賃金センサスの全年齢平均賃金が原則。女児は男女計を使うのが一般的
- 後遺障害逸失利益・死亡逸失利益ともに、就労始期を18歳として計算する
- 保険会社の提示額は低くなりやすく、弁護士基準との差が大きい
子供の逸失利益は金額が大きくなりやすい一方、算定には専門的な判断が必要です。基礎収入の選び方や等級認定の内容次第で、賠償額は大きく左右されます。
当法律事務所では交通事故案件を累計300件以上取り扱っており、初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。

