会社役員は減収なしでも休業損害を請求できる?認められる条件と3つの方法を解説 |大田区で交通事故の弁護士相談

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会社役員は減収なしでも休業損害を請求できる?認められる条件と3つの方法を解説

会社役員の休業損害で減収なしと言われ、お悩みの方は必見です。この記事では、役員報酬が減らなかった場合の請求の可否と、認められる条件を解説しています。実は減収なしでも、労務対価の実態によっては請求できる余地があるのです。この記事を読めば、示談前に確認すべき点が分かります。

このような状況に心当たりはありませんか?

  • 役員報酬は減っていないが、事故で仕事に大きな支障が出た
  • 保険会社に「減収なしだから休業損害は払えない」と言われた
  • 示談を急がされていて、このままサインしてよいか迷っている

実は、こうした状況でも休業損害を請求できる可能性はあります。役員報酬のうち労務の対価にあたる部分は、休業損害の対象になるからです。

この記事では、会社役員の休業損害が減収なしでも認められる条件と、請求できる3つの方法を解説します。この記事を読めば、示談前に確認すべきポイントが分かるはずです。結論として、会社役員の休業損害は減収なしでも、労務対価の実態次第で認められる余地があります。

目次

会社役員の休業損害は減収なしだともらえない?

結論として、役員報酬に減収がなくても、休業損害が一切認められないわけではありません。休業損害の対象になるのは、役員報酬のうち労務の対価にあたる部分だからです。利益配当の性質を持つ部分は、休業しても減らないため、そもそも対象になりません。

保険会社は、報酬が減っていない事実だけをもって、休業損害を否定してくることがあります。しかし、判断の軸は報酬総額ではなく、労務対価部分がどれだけあるかです。以下では、労務対価部分の考え方を詳しく解説します。

休業損害の対象となる役員報酬の範囲

役員報酬は、すべてが休業損害の対象になるわけではありません。対象になる部分とならない部分に分かれるため、その内訳を理解しておく必要があります。分け方と判断を左右する要素を見ていきましょう。

労務対価部分と利益配当部分の違い

役員報酬は、性質の異なる2つの部分で構成されています。1つは、実際に働いたことへの対価として支払われる「労務対価部分」です。もう1つは、役員という地位に基づいて受け取る「利益配当部分」で、労務の有無にかかわらず支払われます。

休業損害として請求できるのは、このうち労務対価部分のみです。利益配当部分は、休業しても本来減らない性質のため、交通事故による損害とは評価されません。この区分は、役員報酬に関する裁判実務で広く使われている考え方です。

区分 内容 休業損害の対象
労務対価部分 役員が実際に働いたことへの対価 対象になる
利益配当部分 役員という地位に基づく取り分 対象外

 

労務対価部分の割合を左右する判断要素

労務対価部分がどの程度あるかは、複数の事情を総合的に考慮して判断されます。会社の規模、役員の地位、報酬額、事故後の推移などが判断材料です。

小規模な会社で役員本人が中心的に稼働している場合は、労務対価部分が広く認められやすくなります。逆に、名目的な地位でほとんど稼働していない場合は、認められにくくなります。

判断要素 認められやすい 認められにくい
会社規模 小規模 大企業
役員の地位 実質的取締役 名目的取締役
事故後の推移 減額あり 減額なしでも判断は別

 

役員の休業損害が認められにくいケース

労務対価部分がほとんど認められず、休業損害が否定されやすいケースもあります。地位にとどまり、実質的な業務を担っていない場合が典型的です。

ケース 傾向
名目的取締役 労務対価なしと判断されやすい
社外監査役・非常勤取締役 利益配当部分が大半を占める

 

保険会社が減収なしを理由に休業損害を否定する背景

会社役員の報酬は、任期中は契約で定められた金額のまま支払われることが多く、事故で休業しても減額されにくい仕組みです。保険会社はこの点を踏まえ、報酬が減っていない事実だけを根拠に、休業損害を否定してくることがあります。また、実際に減額されていても、減額と事故との因果関係を争われる場合があります。

減収なしでも請求できる可能性がある3つの方法

減収がなくても、休業損害を請求できる方法を会社との関係性や報酬の実態、会社側の損害という3つの視点から見ていきましょう。

会社と役員個人を同視できる一人会社の場合

会社の実態が一人親方に近く、役員個人と経済的に同一と評価できる場合には、休業損害を請求できる可能性があります。実際に、代表者が実質的に一人で会社を切り盛りしていた事案があります。この事案では、会社の収入を本人の収入と同視し、日額に休業日数を乗じた金額が示談で認められました。

この方法が使えるのは、法人と個人の業務が実質的に一体化しているケースに限られます。もっとも、裁判に移行した場合は、労務対価部分の立証を求められ、認定が厳しくなることもあります。示談交渉の段階から、稼働の実態を具体的に説明することが重要です。

報酬が形式的に維持されているだけの場合

役員報酬は、株主総会の決議を経ないと変更できません。法人税や社会保険料の兼ね合いで、報酬額を動かしにくい実務上の事情もあります。そのため、事故後に報酬が減っていなくても、それだけで労務対価がないとは判断されません。

この場合は、報酬を据え置いた理由と、実際には稼働できなかった実態を具体的に説明することが重要です。稼働できなかった期間の業務日誌や、取引先とのやり取りなどが、有力な裏付け資料になります。

会社が反射損害として加害者に請求する場合

役員が休業しても報酬を減額せず支払い続けた場合、会社には「労働の提供を受けずに報酬を払った」という損害が生じます。これを反射損害といい、会社自身が加害者に賠償を請求できるのです。ほかにも、役員の休業による売上の減少や、代替要員の確保にかかった外注費が、反射損害として認められることがあります。

ただし、請求できる範囲は本来の休業損害額に相当する額に限られます。加えて、役員の業務に代替性がなく、事故との因果関係が認められることも条件です。請求する主体は役員個人ではなく会社であり、役員本人の損害賠償請求とは別の手続きです。

役員の休業損害を計算する手順

休業損害の計算式自体は、会社員や自営業者と変わりません。役員の場合は、基礎収入の算定方法に特徴があります。次から、その考え方と具体的な計算例を見ていきましょう。

基礎収入は労務対価部分から算出する

休業損害は、基礎収入の日額に休業日数を掛けて算出します。会社役員の場合、基礎収入となるのは役員報酬全体ではなく、労務対価部分のみです。労務対価部分の割合が明確でないときは、賃金センサスの平均賃金を参考に算定することもあります。

なお、自賠責保険の基準では、日額は原則6,100円で、立証により最大19,000円まで認められます。この労務対価部分の証明は、被害者側の責任です。

計算例|役員報酬月額60万円の社長のケース

計算例として、役員報酬月額60万円の社長のケースを見てみましょう。役員報酬は月額60万円で、労務対価部分は70%と評価されたとします。休業日数は30日です。

項目 金額・日数
役員報酬(年額) 720万円
労務対価部分(70%) 504万円
基礎収入(日額) 13,808円
休業日数 30日
休業損害額 414,240円

 

休業損害の請求で準備したい資料

休業損害を認めてもらうには、客観的な裏付け資料が欠かせません。大きく分けると、報酬に関する資料と、稼働実態を示す資料の2種類です。それぞれの具体例を紹介します。

役員報酬の額と内訳を示す資料

役員報酬の額や内訳を示す主な資料は、以下のとおりです。

  • 源泉徴収票・確定申告書
  • 決算報告書(貸借対照表・損益計算書)
  • 勘定科目内訳明細書
  • 株主総会議事録
  • 法人事業概況説明書

これらは、労務対価部分がどの程度あるかを客観的な数字で示す根拠になります。

職務内容と稼働実態を示す資料

職務内容や稼働実態を示す資料としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 陳述書:事故前の業務内容や稼働状況を具体的に記述したもの
  • 組織図・業務分掌表:役員が担っていた業務の範囲を示す資料
  • 業務日誌・予定表:実際の稼働状況を客観的に裏付ける資料
  • 取引先からの証明書:業務遂行への影響を示す資料
  • 事故前後の決算書:稼働できなかった影響を数字で示す資料

こうした資料をそろえることで、労務対価部分の主張に説得力が増すでしょう。

労務対価性が判断された裁判例

労務対価性が実際にどう判断されたかは、裁判例を見ると分かりやすくなります。ここでは、代表的な2つの判決を紹介します。

事故後に減少した報酬を認めた神戸地裁の判決

神戸地方裁判所は、令和元年10月31日の判決で、会社役員の休業損害を認めました。原告は株式会社の代表取締役で、会社のほぼすべての業務を1人で担っていました。事故による治療中に、役員報酬が実際に減少していた点が重視されています。

裁判所は、会社の規模や業務内容、事故前後の利益状況、報酬額の推移などを考慮しました。そのうえで、事故の影響が少ない年と、1年間治療した年との報酬差額分を、休業損害として認定しています。

役員報酬の全額を労務対価とした東京地裁の判決

東京地方裁判所は、平成28年11月17日の判決で、印刷機器の販売会社の代表取締役について判断しました。この会社は、原告が単独で経営する一人会社でした。

息子の妻が経理を手伝うほかは、原告がほぼすべての業務を担っていた点が重視されています。裁判所は、役員報酬の全額を労務提供の対価と認め、基礎収入を1,080万円としました。

役員の休業損害を弁護士に相談するメリット

労務対価部分の主張や資料の整理には、専門的な知識が求められます。弁護士に相談すれば、請求できる余地を見逃さずに進められます。以下では、具体的なメリットを見ていきましょう。

労務対価部分を資料に基づいて主張できる

労務対価部分の割合は、感覚ではなく、資料に基づいて主張することが重要です。弁護士は、株主総会議事録や決算報告書等から、職務内容と報酬の関係を整理します。そのうえで、保険会社に対して、説得力のある根拠を示しながら交渉を進めます。

併せて、事故前の就労状況を具体的に伝えることも重要です。税理士による休業損害調査を活用すれば、労務対価部分を客観的に証明できます。こうした準備は、示談交渉だけでなく、裁判に移行した場合の備えにもなります。

減収なしの主張へ反論し会社の請求も検討できる

保険会社が「減収なしだから休業損害はない」と主張しても、それだけで請求を諦める必要はありません。弁護士は、労務対価部分の実態や会社に生じた反射損害の観点から反論を組み立てます。

さらに、会社側からの損害賠償請求が可能かどうかも並行して検討できます。こうした複数の選択肢を検討できる点が、弁護士に相談するメリットです。

弁護士費用特約で費用負担を抑えられる

弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用を保険会社が負担するため、実質無料で相談・依頼できます。本人だけでなく、同居の家族や別居中の未婚の子も対象となるケースが多いです。補償の上限は、300万円程度に設定されている場合が一般的です。

特約がない場合でも、着手金無料の料金体系を採用する法律事務所もあります。費用面の不安がある方も、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。

会社役員の休業損害に関するよくある質問

会社役員の休業損害に関して、多くの方が疑問を抱きやすいポイントを以下でまとめました。逸失利益との違いや役員報酬の減額に伴う税務上の扱い、保険会社への対応方法など、気になる点を順番に確認していきましょう。

減収がなくても逸失利益は認められますか?

条件によっては逸失利益も認められます。逸失利益は、後遺障害によって将来生じる収入減少への補償です。休業損害と同様に、役員報酬のうち労務対価部分を基礎として算定されます。

実際の報酬額が維持されていても、労働能力の低下による将来の減収可能性が認められれば、請求できる場合があります。裁判所は、後遺障害の内容や職務への支障度合いなどを総合的に考慮して判断するからです。

役員報酬を減額すると損金不算入になりますか?

役員報酬は、原則として毎月同額を支払う「定期同額給与」でなければ、損金として認められません。事業年度の途中で減額すると、差額分が損金不算入となる恐れがあります。

ただし、交通事故によるけがで長期の休業を要するなど、やむを得ない事情がある場合は例外的に認められることがあります。実際の判断は個別の事情によって異なるため、対応にあたっては税理士への確認が必要です。

 保険会社から減収なしと言われたらどうすればよいですか?

保険会社から減収なしと言われても、その場で示談に応じるのは避けましょう。役員報酬のうち労務対価部分がどの程度あるかによって、請求できる余地が残っています。

まずは株主総会議事録や決算報告書等の、職務内容と報酬の関係を示す資料を集めることが大切です。そのうえで弁護士に相談すれば、資料に基づいた反論や交渉を任せられます。

まとめ|減収なしでも諦めずに弁護士へ相談を

役員報酬が減っていないというだけで、休業損害の請求を諦める必要はありません。ここまでの内容を振り返っておきましょう。

  • 役員報酬は「労務対価部分」と「利益配当部分」に分けて考えるのが実務の基本
  • 減収なしでも、一人会社や報酬維持が形式的な場合などは請求できる余地がある
  • 会社が反射損害として加害者に請求できるケースもある
  • 請求には役員報酬の内訳や職務内容、稼働実態を示す資料の準備が欠かせない
  • 神戸地裁や東京地裁の判決でも、労務対価性を重視した判断が示されている

示談に応じる前に、資料をそろえて弁護士へ相談することをおすすめします。まずはお気軽に当法律事務所までご相談ください。

 

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