「自筆証書遺言の書き方とは?効力を確実にするためのポイントを解説」 |大田区の相続、遺産分割を弁護士に相談

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「自筆証書遺言の書き方とは?効力を確実にするためのポイントを解説」

ご自身の大切な財産を、ご家族や団体などへ遺したい場合は「遺言書」を作成することがおすすめです。遺言書には3つの種類がありますが、いつでも気軽に作成できる「自筆証書遺言」に関心を持つ方も多いでしょう。

しかし、気軽に作成できる分ミスも起きやすく、無効になってしまうケースも後を絶ちません。そこで、本記事では自筆証書遺言の書き方に焦点を当てて、効力を確実にするためのポイントを中心に詳しく解説します。

自筆証書遺言は財産目録を除く全文を遺言者自身で自筆する必要があるなど、細やかなルールがあります。効力を無効にさせないためには、専門家に相談しながら作成することが大切です。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは「遺言者自身が全文手書きで作成した遺言書」を意味します。遺言書にはこの他に公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、いつでも気軽に作成できるため遺言書作成のハードルが低いというメリットがある形式です。(民法968条第1項)

この章では自筆証書遺言について、主な特徴や他の遺言書との違いについてわかりやすく解説します。

遺言者自身が書く遺言書のこと

自筆証書遺言は遺言をする人(遺言者)が、遺言内容の全文・日付・氏名をすべて自分で手書きし、押印して作成する遺言書のことです。手元にある紙とペンで作成できるため費用がかからず、思い立った時に手軽に作成できる点が大きな特徴です。

2019年(平成31年)113日の民法改正により、財産目録については自筆以外も認められるようになりました。ただし、財産目録も全ページ(両面も)に遺言者の署名・捺印が必要です。

 公正証書遺言・秘密証書遺言との違い

一般的に知られている遺言書には自筆証書遺言の他に、公正証書遺言・秘密証書遺言があります。では、この2つの遺言書と自筆証書遺言の違いとはどのような点でしょうか。詳しくは以下の図をご確認ください。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成する人 遺言者本人 公証人 遺言者本人(署名押印のみ)
証人の有無 不要 2人以上必要 2人以上必要
費用 低コスト 公証役場の手数料などが必要 公証役場の手数料などが必要
原本保管 遺言者本人または法務局(保管制度利用時) 公証役場 遺言者本人
検認の要否 必要(法務局での保管制度利用時は不要) 不要 必要
無効リスク 高い 低い(公証人が関与するため) 高い
内容の秘密 高い(自分以外は保管制度利用時のみ知る) 低い(証人や公証人が内容を知る) 高い(封印されているため内容を知られない)

 

自筆証書遺言はその他の遺言書より低コストで作成できるというメリットがありますが、相続開始後は検認の手続きが必要であり、無効となるリスクも高いため注意が必要です。

次に紹介する書き方をしっかりと把握した上で作成しなければトラブルに発展する恐れがあります。

遺言書の検認については以下リンクをご一読ください。

参考URL 裁判所 遺言書の検認

自筆証書遺言の正しい書き方|効力を有効にするためのポイント

先に触れたように自筆証書遺言は、遺言書の全文を遺言者自身が手書きする必要があります。遺言内容をパソコンで作成したり、他人に代筆してもらったりしたものは効力がないため、せっかく書いても無効になってしまいます。

そこで、この章では自筆証書遺言の正しい書き方についてポイントを解説します。

作成した「年月日」を正確に記載すること

遺言書を作成したら、作成日を正確に(年・月・日)を明記しなければなりません。「月吉日」や「誕生日に作成」といった曖昧な表現では無効となる可能性があります。日付は、複数の遺言書が存在する場合や、作成時の判断能力が争われた場合に重要になるため、漏れがないよう自筆で記載します。

遺言書は遺言者自身の署名・押印が必要

遺言書は遺言者による自書である必要があり、財産目録以外は自筆したら遺言者本人が氏名を署名し、押印する必要があります。

なお、遺言書に押す印鑑は実印である必要はありませんが、トラブルを避けるためには実印を使用するケースもあります。

財産目録はパソコン、ワープロや登記事項証明書(登記簿謄本)など内容がわかる資料などを添付しても問題ありませんが、こちらも必ず自筆による署名と押印が必要です。

夫婦や親子での連名は不可

遺言書は遺言者個人の意思表示であるため、夫婦や親子など、複数人が連名で作成することはできません。よくある夫婦連名で共同作成された遺言書は無効です。家族のために共同で財産を遺したい場合も、別々の遺言書を作成します。

自筆証書遺言が無効になりやすい理由とは

自筆証書遺言書は遺言書の知識がなくても気軽に作成できるため、多くの方々が作成しています。その一方で、専門家がチェックしなくても作成できるためミスが起きやすく、無効が多い点も押さえておきましょう。

そこで、この章では自筆証書遺言が無効になりやすい理由を解説します。無効対策のためにもぜひご一読ください。

正しい方法で訂正されていない

遺言書を作成した後に、預貯金口座を解約したり不動産を購入したりと、財産に変動が起きることは珍しくありません。また、書いている途中で誤字があることも多いでしょう。このような場合は記載内容を訂正・削除すればOKですが、正しい方法で訂正されていないと無効になってしまうおそれがあります。

■自筆証書遺言の正しい訂正・削除方法(修正テープ・修正液使用不可)

①訂正方法

訂正箇所を二重線で消し、訂正印(署名・押印時と同様の印鑑)を近くに押します。正しい文言を横書きなら訂正箇所の上部へ、縦書きなら真横に記載します。遺言書の末尾に、訂正した内容を書き、新たに署名してください。

②削除方法

削除箇所を二重線で消し、印を押します。(①と同様の手順)遺言書の末尾に削除した内容を書き、新たに署名してください。

なお、加筆時も訂正方法と同様です。後述する自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は自由に訂正ができないため、預けた遺言書は撤回し、訂正した上で預け直す必要があります。

すべてパソコンなどで作成されている

財産目録のパソコン等による作成が民法改正により認められて以降、遺言書の本体もパソコンで作成されるケースも見られています。前述の通り、財産目録を除き遺言書の本文すべてがパソコンなどで作成されている場合は効力がありませんのでご注意ください。

破損・汚損している

自筆証書遺言は自宅の机などで保管できるため、長期間の保管で破損や汚損が起きやすいというデメリットがあります。例として字が薄くなっていて読めない、汚損で滲んでしまっており読めない場合は無効となるおそれが高いため、保管場所には注意が必要です。

日付や署名・押印の漏れ

ここまでご一読のとおり、遺言書は日付・署名・訂正印や訂正内容等の署名が不可欠です。どれかが漏れてしまうと無効となるおそれが高くなるため、民法で定められている要件に沿って適切に作成・修正を行う必要があります。

認知症などを理由に判断能力が低下している

遺言を作成する際には遺言者が遺言の内容を理解し、その結果を判断できるだけの判断能力(遺言能力)が必要です。認知症などにより、遺言書作成時に遺言能力が著しく低下していたと判断された場合、遺言書が無効となることがあります。

自筆証書遺言の効力を有効にするためにできること

無効のリスクが高い自筆証書遺言を有効な書面として作成・保存するためには、適切な対応が求められます。そこで、有効にするためにできることをご説明します。

遺言能力があるうちに作成する

遺言書はご自身の判断能力がしっかりしている健康なうちに作成しておくことが非常に重要です。体調が悪くなってからでは、遺言能力の有無が争われるリスクが高まります。特に高齢になると認知症リスクが高まります。早めに作成しておくことで無効トラブルを回避できます。

専門家に相談の上で作成する

自筆証書遺言は手軽な反面、無効になるリスクが高いため弁護士や司法書士、税理士といった法律の専門家に相談し、法的に有効な形で遺言書を作成してもらうことで、将来のトラブルを回避できます。

専門家に相談すると、遺留分など揉めやすいポイントについてもアドバイスが受けられるほか、内縁の配偶者や民間・行政と言った団体への遺贈に関するリスクもアドバイスが受けられるため、相続トラブル全般に備えた遺言書が作成できます。

公正証書遺言以外でも、遺言書を扱う専門家の場合は自筆証書遺言へのアドバイスも行っていることが多いため、相談の上で作成することがおすすめです。

公正証書遺言で作成する

自筆証書遺言に不安がある場合は、公正証書遺言の作成を検討することをおすすめです。公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、形式不備で無効になるリスクが極めて低く、原本は公証役場で保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。費用はかかりますがリスク回避につながります。

また、公正証書遺言は口述でも作成できるため自筆が難しい方でも遺言書を作成できるというメリットもあります。検認手続きも不要となるため遺産の分配もスムーズです。

自筆証書遺言書保管制度を利用する

自筆証書遺言で作成したい場合、2020710日よりスタートした「自筆証書遺言書保管制度」を利用することがおすすめです。この制度は作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度で、従来生じていた破損・汚損や紛失のリスクを大きく改善できます。また、本制度を利用する場合は検認も不要です。

ただし、公正証書遺言のように公証人が書き方や中身などの形式を詳しく確認するわけではないため、無効となるリスクはあります。

本制度の詳しい概要は以下のリンクをご一読ください。

参考URL  法務省 自筆証書遺言書保管制度

訂正ではなく再作成を行う

先述のとおり、自筆証書遺言を訂正したり内容を削除したりする場合は民法で定められた細かい修正方法をしっかりと守る必要があります。何度も訂正していると補記箇所も増えてしまい、読みにくく効力を争うケースへと発展するおそれもあります。

そこで、もしも訂正や削除などが発生したら作成した自筆証書遺言を破棄し、もう1度新しいものを作成することもおすすめです。破棄をすれば撤回したことになり、新しく作成する遺言書に効力が生じます。

複数の遺言書がある場合は最新版が優先されるため、古いものは適切に処分し相続開始後の混乱を防ぐことも大切です。(※)

(※)公正証書遺言の場合は原本が公証役場で保管されており、作成した遺言者が保管している正本と謄本を破棄しても、遺言書を撤回したことにはなりません。

遺言書の効力が争われてしまうとどうなる?

もしも自筆証書遺言を残しても、何らかの不備などがあり効力が争われてしまった場合、どのようなトラブルが起きるでしょうか。この章では遺言書の有効性を争う場合に起きるトラブルをわかりやすく解説します。

遺言無効確認訴訟に発展する

遺言書の有効性について相続人間に争いが生じると、遺言無効確認訴訟に発展するおそれがあります。遺言書の有効性を争うための訴訟であり、始まってしまうと12年(第一審)程度の時間を要し、控訴や上告にまで発展する場合はさらに時間がかかります。

本訴訟が始まると、家族内の亀裂や精神的な負担が長く続くことになり、訴訟後もトラブルの火種が残りやすくなります。

親族間で争いが起きてしまう

訴訟に発展しなくても、遺言書をめぐる争いは親族間に深刻な対立を引き起こします。家族関係が修復不可能なほどに悪化してしまうことも少なくありません。親族間で遺言書をめぐる対立は、主に以下の2つのケースで起こります。

・遺言書そのものの有効性を争うケース

・遺言書に書かれた内容について争うケース

特に遺言能力の有無が争われるケースでは「家族の誰かが無理に遺言書を書かせたのではないか」など疑いが深まってしまうことが多いため注意が必要です。

相続税申告に影響する

遺言書の有効性が争われ相続手続きが滞ると、相続税の申告にも影響します。相続税申告・納付の期限はともに「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」のため、案外期間の猶予がありません。

相続税申告は遺言書の有効性を争っていたとしても、期間を延長させることができません。そのため、家族が協力して相続税申告・納付は乗り越える必要があります。もしも申告・納付が遅れてしまうと延滞税等のペナルティが課せられてしまうため、早めの対応が欠かせません。

遺言書作りはまずは専門家へ|安心の遺産相続を実現しよう

ご自身の思いを込めて大切な財産を次世代へ託したい場合、残されたご家族が円満に相続手続きを進められるように正しい形式の遺言書を作ることが大切です。

遺言書には民法で定められた細やかなルールがあります。さらに、遺言書では法定相続人以外の人や団体へ遺贈ができる分、遺留分侵害などをめぐるトラブルが起きやすいため注意が必要です。自筆証書遺言であってもまずは専門家へ相談しましょう。

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