遺産分割審判における不動産の取扱いとは? |大田区の相続、遺産分割を弁護士に相談

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遺産分割審判における不動産の取扱いとは?

相続のトラブルでお悩みですか?遺産分割審判は、遺産分割協議がまとまらない場合に裁判所が介入し、公平な解決を目指す手続きです。不動産の評価や分割方法、費用、弁護士の選び方まで、審判のすべてを解説します。

目次

遺産分割審判とは何か?

遺産分割協議との違い

遺産分割協議は、相続開始後、相続人全員の話し合いで遺産の配分を行う手続きです。合意に至れば円満解決ですが、関係悪化や人数が多いと意見対立が生じがちです。特に不動産が絡む場合には、その価値評価等を理由として対立が激化しやすい傾向があります。関係者間による協議が整わない場合には、家庭裁判所に「遺産分割審判」を申立て、裁判所による審判を待つことになります。

審判が必要なケースとは?

相続人間で協議が整わない、または一部が協議に応じない場合に審判手続へ移行します。上述のように、不動産が遺産に含まれる場合、その評価額や利用方法で意見が食い違いやすく、協議が難航する傾向にあります。所在不明者、感情的対立、非協力的な相続人がいる場合も家庭裁判所の審判を求めることが良いでしょう。相続税申告期限が迫った状況にあり、早期解決が必要なケースでも、裁判所の関与を求めます。審判に進むことで、裁判所が中立的かつ法的な観点から判断を下されるため、関係者間の感情的な対立を乗り越えて、合理的な解決を目指すことが可能になります。

不動産事案の特徴

不動産は物理的に分けにくく、評価額、利用状況、占有に関する争いが生じやすいといえます。複数相続人による使用や特定相続人の単独占有がある場合、使用利益の按分や明渡しでトラブルが生じがちです。評価基準(固定資産税評価額、路線価、市場価格のいずれか)でも意見の相違が生じ、公平な分割を実現することは時間がかかるだけでなく、困難であるのが現実です。また、故人の実家など感情的な価値が生じる不動産の場合には、「売却したくない」「住み続けたい」といった主張がぶつかるケースも多く、遺産分割協議や審判が複雑化し、時間と費用が想定以上に必要になることが少なくありません。

遺産分割審判の基本的な流れ

申立てから審判までのステップ

相続人の1人または複数人が家庭裁判所に対して「遺産分割審判申立書」を提出します(添付書類として、戸籍謄本、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書等が必要です)。遺産内容や希望する分割方法を記載します。

次に、家庭裁判所が審理期日を設定し、各相続人に通知がなされます。期日当日においては、証拠や主張に基づき、裁判官が事実関係を確認するとともに、必要に応じて事情聴取も行います。

家庭裁判所においては、審判前にまず「調停」が試みられ、調停委員が双方の主張を調整し、協議による解決を図ります。ここで合意が成立した場合には、「調停調書」が作成され、審判を経ずに手続きが終了します。

調停で合意に至らなかった場合、裁判所が職権で遺産内容や相続人の状況を考慮し、公平な分割方法を判断することになります。家庭裁判所より「審判書」が発行されます。

審判期日の回数と所要期間

個別の事案にもよりますが、平均して3〜5回程度の期日が設けられ、期間としては半年〜1年程度で審判が下るのが一般的です。ただし、遺産内容、相続人の人数、争点の複雑さで所要期間は大きく異なる場合があることに留意する必要があります。不動産評価の鑑定、寄与分や特別受益の主張がなされる場合、審理は長引きます。相続人が遠方に居住していたり、期日に参加できないことも生じ得ます。また、意見書提出の遅れも時間を要する要因になります。調停が成立すれば短期間で終了する可能性もありますが、不成立の場合は審理再開まで1年以上かかるケースもあるといわれています。

管轄裁判所の確認方法

管轄裁判所は、原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。裁判所の公式ウェブサイトや電話等で直接問い合わせることにより確認することができます。相続人が全国に散在するケースや、複数の都道府県に不動産が所在する場合には、管轄の判断が難しい問題が生じます。そのような場合には、相続問題に関する法理論と実務に精通した弁護士に相談することが確実であり、また、その方が時間的にも早期な解決が実現するでしょう。

審判で問題となる不動産の評価と分割方法

不動産評価の基準日と評価方法

不動産評価は原則として審判時の時価を基準とし、固定資産税評価額や不動産鑑定士による評価が参考になされます。市場価格、路線価、過去の取引事例なども総合的に考慮され、裁判所は公平性を重視し、多角的な資料に基づき適正価格を算出します。不動産評価は遺産分割全体に影響し、リフォームや未登記建物の存在、相続人の居住状況(使用貸借の扱いを考慮した減価評価等)も考慮されます。これらの評価が相続人間の公平な分割に直結するため、裁判所が専門鑑定人を選任するケースも多いといえます。費用や時間はかかりますが、納得感のある分割を行うためには不可欠なプロセスといえるでしょう。

不動産の分割方法:現物分割・代償分割・換価分割

不動産の分割方法は、基本的に3つに分類されます。以下に説明を加えます。

現物分割

不動産を物理的に分ける方法です。広い土地の分筆や二世帯住宅の上下階をそれぞれ所有する事例があります。物理的に困難な場合や価値が下がる可能性がある場合には、現物分割を進めることは適切とはいえないでしょう。このような場合、共有物分割の訴訟を検討する可能性もありますが、遺産分割審判中で解決が図られることが一般的です。関係者間で調整がつかない場合には、上述のように相続に詳しい弁護士の指導を受けることを検討すると良いでしょう。

代償分割

不動産を一人が取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。特に自宅を引き継ぎたいケースで多い。代償金の用意が鍵になります。ローン利用や現物での代償も可能です。

換価分割

不動産を売却し、現金を分ける方法です。公平性が高く資産価値が明確になるメリットがありますが、売却までの時間や手間、価格変動リスクもあります。「売却に反対」の人がいると手続きが難航します。

代償分割の実例と注意点

代償分割では、不動産を一人が取得し、他の相続人に代償金を支払う際、その額や支払能力が問題となります。被相続人の自宅を同居の子が取得し、他の兄弟に現金を支払う事例が典型的です。代償金算定には、不動産の評価額に加え、居住継続の必要性、生活状況、介護貢献なども考慮されます。実務では、一括払いが困難な場合、分割払いや期限付きの支払方法も認められますが、他の相続人の同意が必要です。銀行ローン利用の可能性や審査見通しも重要な点です。代償金を支払わないまま名義変更を進めるとトラブルになるため、審判書に支払方法や期限、担保の有無を明確に作成し、履行確保を図ることが推奨されます。

審判が確定するまでの不動産収益の扱い

家賃収入などの処理

不動産から発生する賃料は、相続開始時から共有財産とされ、原則として法定相続分に応じて按分されます。被相続人名義の賃貸マンション賃料は、たとえ一人が管理していても、法的には相続人全員に属する財産です。この収入は後の分割協議や審判で精算対象となるため、記録や帳簿を残すことが重要です。一部相続人が家賃収入を無断で消費した場合、トラブルに発展する可能性があるため、速やかな分配や信託口座での一時管理が推奨されます。こうしたトラブルの回避策についても、相続の理論と実務に精通した弁護士を起用することで解決できます。

使用・占有している相続人の扱い

不動産を単独で占有している場合、不当利得として賃料相当額の支払いを請求される可能性があります。被相続人の自宅に相続人一人が住み続けるケースでは、その占有によって得られる経済的利益(家賃に相当する金額)に対し、他の相続人への金銭的補償を行うべきと判断されることがあります。「被相続人から使用許可されていた」と主張しても、相続財産である以上、他の相続人との間で公平な精算が必要です。賃料相当額は相場や不動産の状態、占有期間を考慮して算定され、必要に応じて専門家による査定も行われます。不動産の収益や占有の扱いは審判前後の関係に大きく影響するため、早期整理とトラブル防止が重要です。

審判確定後の手続き

確定証明書と登記手続き

審判が確定すると、「審判書」と「確定証明書」により不動産の相続登記が可能になり、名義変更が正式に行われ、新たな所有者が確定します。登記手続きは法務局で行い、審判書、確定証明書、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書等を提出します。申請書に記載誤りがあると却下される可能性があるため、弁護士に対応を依頼することが多いといえます。不動産登記が完了していない場合には、担保融資や売却手続きを行うことができないため、速やかな登記完了が重要です。

任意売却・競売の実行方法

登記後、売却を希望する場合、相続人全員での任意売却か裁判所を通じた競売を選択します。任意売却は不動産会社を通じて市場価格で買主を探し、売却代金を法定相続分または審判内容に基づき分配します。柔軟な対応と高値売却が期待できます。一部相続人が売却に反対し任意売却が困難な場合、家庭裁判所に競売を申立てることが可能です。競売は時間と費用を要し、市場価格より安価になる傾向がありますが、強制力があるため合意形成が難しいケースで有効です。売却後の金は裁判所が関与し分配され、透明性と公正性が確保されます。

登記に必要な書類一覧

登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 遺産分割審判書
  • 審判確定証明書
  • 被相続人の除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍・住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 登記申請書
  • 印鑑証明書(場合による)

※代償分割や委任状を伴う登記手続で求められる可能性があります。

遺産分割審判の強制力と執行手段

審判に従わない相続人がいる場合の対応

審判には法的拘束力があり、確定内容は相続人全員に対する拘束力を持ちます。このため、審判に従わない人がいても、他の相続人は内容に基づき権利実現を請求することができます。

強制執行の申立て方法

家庭裁判所の審判に基づき、地方裁判所に対して強制執行を申し立てることが可能です。不動産の引渡し命令に従わない場合、引渡命令の強制執行を行うことが可能です。金銭の支払いを命じられた場合、相手方の預貯金や動産、不動産に対して差押えを行うことも可能です。執行には「債務名義(審判書)」と「執行文付き確定証明書」が必要で、執行官が実務を担当します。申立てには必要書類、申立手数料、執行費用の用意が求められるため、手続き全般について弁護士に依頼することが確実です。

従わない場合のリスクと制裁

審判に従わない場合、相続人は法的リスクを負います。不動産の明渡しに応じなければ、執行官による強制明渡しと執行費用の負担が生じます。金銭の支払いに応じない場合、口座や給与の差押えを受けることなど、自身の生活に影響が出る可能性があります。強制執行による財産差押えは、裁判所や金融機関に記録が残り、信用取引や金融活動に支障を来す可能性もあります。

競売や任意売却の活用方法

競売申立ての手続きと流れ

合意に至らず現物分割も困難な場合、裁判所に競売を申立てて、売却金を分配します。競売は、家庭裁判所の審判後、地方裁判所に申立てを行い、執行官によって不動産が競売にかけられます。現地調査、評価、公告等が必要で、売却代金分配まで数ヶ月から1年程度かかることがあります。競売は強制的な処分手段であり、協議が完全に破綻し、分割や任意売却が不可能な状況に限り選択されます。売却価格は市場価格を下回ることが多いため、経済的な不利益が生じる可能性もあります。

任意売却に必要な合意と進め方

任意売却には相続人全員の合意が前提です。合意が得られれば、不動産会社に依頼し、市場価格で買主を探すことが可能です。任意売却の最大のメリットは、相場に近い価格で不動産を処分でき、公平かつ合理的に資産を分配できる点です。手続きは査定、媒介契約、交渉、契約、引渡しを経て売却代金を各相続人に分配します。登記の名義変更や融資手続きも絡むため、司法書士や不動産の専門家の関与があると安心です。相続人中に反対者や連絡が取れない者がいる場合、任意売却は進められないため、競売に切り替える必要があります。リスク回避のため、円滑なコミュニケーションと合意形成が重要です。

実務に役立つ遺産分割審判の関連情報

判例で見る不動産の遺産分割審判

評価額に関する争点

不動産の評価時点や評価手法に関する争いは頻繁に発生し、判例でも妥当性が争点です。評価時点を相続開始時か審判時とするかで額に差異が生じ、各相続人の遺産*額に影響が出ます。評価手法(固定資産税評価額、路線価、市場価格、不動産鑑定士による鑑定等)の選択も争点となりやすいです。判例では、これらの評価手法の選定理由や合理性が詳細に検討され、個別状況に応じた柔軟な判断が行われています。

特別受益・寄与分との関係

不動産の評価において、被相続人からの生前贈与や介護貢献が特別受益や寄与分として考慮されることがあります。特別受益は、生前に援助を受けた相続人がいる場合に、その分を相続財産から控除し、他の相続人との公平を図る制度で、不動産贈与が典型的です。判例では、贈与が特別受益にあたるか、その目的、金額、時期が検討されます。寄与分は、被相続人の療養看護や事業支援に貢献した相続人が、通常の相続分以上の取り分をもらう主張ができる制度です。不動産では、同居し建物の維持管理や税金支払いを担った相続人が寄与分を主張するケースがあります。判例では、その寄与が相続財産の形成・維持にどの程度貢献したか、具体的な内容と期間、金銭的換算可能性が重視されます。これらの問題に加え、相続人が最低限取得できる相続財産の割合である遺留分を巡る争いも発生し、不動産が主要遺産の場合、遺留分侵害額請求の問題が複雑化し、審判で解決が図られるケースも少なくありません。

遺産分割審判の費用と弁護士活用のポイント

裁判所に支払う費用の目安

裁判所に支払う費用の目安は、申立手数料が数千円程度ですが、郵券、書類謄写費用、必要書類取得費用(戸籍謄本、評価証明書、登記事項証明書等)も必要になります。家庭裁判所への提出書類作成を専門家に依頼する場合、報酬が追加されます。調停が行われる場合、交通費、資料準備費用、専門鑑定人への鑑定費用なども発生します。案件の複雑さや審理の長期化で費用総額は変動するため、見積もりを行いましょう。

弁護士費用の相場と選び方

弁護士費用は着手金と報酬金に分かれ、着手金は20万〜50万円程度、報酬金は経済的利益の10〜15%が目安です。地域や事務所の規模、担当弁護士の経験で料金体系は異なります。遺産分割に強い弁護士を選ぶには、実績、専門分野、依頼者との相性を確認しましょう。初回相談は無料の事務所も多いため、複数の弁護士法人や事務所で気軽に話を聞いて比較するのがおすすめです。事前に予約して相談することで、スムーズに進められます。事務所のアクセスのしやすさや、所属する弁護士の専門分野をメニューとして紹介している法律事務所を選ぶのも良いでしょう。相続に関する専門的な知識を持つ弁護士に依頼することで、複雑な問題の解決がより円滑に進みます。

費用を相続財産から支払うことは可能か?

原則として、弁護士費用等の手続き費用は相続人各自の負担です。これは、相続財産の分割確定前に支出が必要なためです。ただし、相続人全員の合意があれば、相続財産中から一定の費用を充当することも可能です。不動産の売却代金を費用に充てる旨を審判書に明記することで、後の清算をスムーズに進められます。実務では、費用分担に関して合意文書を交わすことで、将来的なトラブルを予防できます。

遺産分割審判申立書の記載例と注意点

記載すべき項目と添付書類

申立書には、相続人全員の氏名・続柄・住所等の基本情報を正確に記載します。相続財産の内容、特に不動産の所在、地番、面積、評価額を明確に記載し、分割方法の希望(現物分割・代償分割・換価分割のいずれか)を具体的に示す点が重要です。添付書類は、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票、遺産に関する固定資産評価証明書や登記事項証明書等が必要です。

書式の入手方法

申立書の様式は、各家庭裁判所の公式ウェブサイトからダウンロード可能です。裁判所によって様式や添付書類に違いがある場合もあるため、申立てを行う予定の家庭裁判所のウェブサイトで最新の書式を確認してください。サイトには記入例も多いため、初めて申立書を作成する人にとって参考になります。

作成時の注意事項

申立書作成時には、記載内容に誤りや漏れがないかを十分に確認することが重要です。相続人の氏名誤記、戸籍との不一致、不動産情報の誤り等があると、裁判所から訂正を求められたり、申立てが却下されたりする原因となります。特に不動産情報は登記事項証明書の記載に基づき正確に転記が必要です。申立てに不安がある場合や内容が複雑な場合には、弁護士や司法書士に相談し、書類をチェックしてもらうことでトラブルを未然に防ぐことが可能です。

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