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ハーグ条約

ハーグ条約とは?

ハーグ条約とは、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」のことを言います。
日本は、このハーグ条約を締結しており、この条約を日本国内で実施するための法律が、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(ハーグ条約実施法)です。この法律は平成26年4月1日以降施行されています。

日本国内でも子どもの連れ去りが問題となることがありますが、ハーグ条約は、いわば国際的な子の連れ去りを防止しようとするものです。
すなわち、親が子を国外から日本に連れ去ったり、子が日本に留置され、国外(常居所地国)への渡航が妨げられているなど、国境を越えた子の連れ去り・留置の発生を防止し、迅速に常居所地国に返還するための仕組みを定めることで、子の利益を守るというのが、ハーグ条約の目的です。

ハーグ条約の締結国

ハーグ条約に基づく子の返還申立てをするためには、連れ去り等が起こる前に居住していた国(常居所地国)がハーグ条約締結国である必要があります。

締約国一覧については、外務省のホームページに記載されています。
それによると、2019年10月時点で締結国は100か国を超えています。
締結国の例をあげると、韓国、中国(香港、マカオのみ)、タイ、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、ブラジル、イタリア、イギリス、オランダ、スイス、スペイン、ドイツ、フランス、ロシア、トルコ、南アフリカ等があります。

ハーグ条約に基づく子の返還申立て

ハーグ条約及びハーグ条約実施法に基づいて申し立てられるのが、「ハーグ条約に基づく子の返還申立事件」です。
これは、ハーグ条約締結国内(常居所地国)に住居所を有している16歳未満の子が、父母の一方によって日本に連れ去られ、日本に所在しているが、この連れ去り又は日本国内での留め置き(留置)が、常居所地国の法律によれば、子の監護の権利を侵害する場合、申立てによって、日本の家庭裁判所が、日本国内で子を監護している相手方に対し、その子を常居所地国に返還するよう命じるものです。

ハーグ条約に基づく子の返還事件の管轄裁判所

日本国内における子どもの住居所地が東京、名古屋、仙台、札幌の高等裁判所の管轄区域内にある場合は東京家庭裁判所、それ以外の場合は大阪家庭裁判所に専属的な管轄が認められます。東京、大阪以外の家庭裁判所がハーグ条約に基づく子の返還申立事件を取り扱うことは認められていません。

子の返還が認められる場合(返還事由)

家庭裁判所は、子の返還申立てが次の①から④の事由の全てに該当するときは、子の返還を命じなければならないとされています。

  • ①子が16歳未満であること
  • ②子が日本国内に所在していること
  • ③常居所地国の法令によれば、子の連れ去り又は留置が申立人の子に対する監護の権利を
    侵害するものであること
  • ④当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国であったこと

子の返還が認められない場合(返還拒否事由)

上記の各要件をみたす場合であっても、次の①から⑥の事由(返還拒否事由)のどれかがある場合、基本的に子の返還は認められません。
もっとも、①、②、③及び⑤については、その事由がある場合であっても、常居所地国への返還を命じることが子の利益に資すると認められる場合、返還を命じることができます。

  • ①連れ去りの時又は留置の開始の時から1年を経過した後に裁判所に申立てがされ、子が新たな環境に適応している場合
  • ②申立人が連れ去りの時又は留置の開始の時に現実に監護の権利を行使していなかった場合
  • ③申立人が連れ去りの前又は留置の開始の前に同意し、又は連れ去りの後又は留置の開始の後に承諾した場合
  • ④常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと、その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合
  • ⑤子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいる場合
  • ⑥常居所地国に子を返還することが日本国における人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合

子の返還申立て事件の特徴

ハーグ条約に基づく子の返還申立事件では、次のような特徴があります。
 

①手続の迅速性

東京家庭裁判所においては、申立てがされてから2週間程度を目安に第1回期日が指定され、進行に応じ、数回期日が重ねられることがあります。期日間に調査官による調査が行われることがあります。
その上で、基本的に、申立てから6週間以内(1か月と2週間程度)で最終的な判断がされます。通常の民事訴訟では、訴訟提起してから判決が出るまで1年以上の時間がかかるケースもあることを踏まえると、ハーグ条約に基づく子の返還申立事件は迅速性が求められていると言えます。

 

②出国禁止命令・旅券提出命令

子の返還申立てをした場合、手続の間に相手方が子を連れてハーグ条約を締結していない国(非締結国)に出国してしまうということを避ける必要があります。そこで、子の返還申立てに併せて、相手方が子を日本国外に連れ出すことを禁止する出国禁止命令や、子名義の旅券(パスポート)を外務大臣に提出するよう命ずる旅券提出命令の申立てを行うこともできます。

 

③翻訳や通訳が必要

日本の裁判所での手続は日本語で行わなければならないとされています。
そのため、常居所地国の法律やハーグ条約締結国における判例、当事者間の外国語でのやり取り、外国語でまとめられた陳述書等を資料として提出する場合、日本語の翻訳文を添付する必要があります。
また、当事者尋問等で通訳が必要となる場合、通訳費用を負担した上で、通訳人を選任する必要があります。

 

④調停や和解によることも可能

子の返還申立手続は、返還事由や返還拒否事由の有無を踏まえて裁判所が決定するものですが、子どもを常居所地国に帰国させるかどうかは、本来、当事者間が協議し、合意の形で決めることが望ましいと言えます。
そのため、返還申立手続の中で、同時並行的に和解協議を行ったり、当事者双方の同意が得られる場合には、事件を調停手続に付して話合いを行うことも可能です。

 

⑤監護権や親権を決める手続ではない

日本国内における監護者指定・子の引渡しの審判や離婚調停は、夫婦間でどちらが監護者・親権者になるかを決める手続きであり、過去の監護実績、主たる監護者、子の意思などの実質的な評価・判断が必要となります。
これに対し、ハーグ条約に基づく子の返還申立手続は、あくまでも、子どもを常居所地国に返還するという範囲にとどまり、どちらが子どもの監護者・親権者になるかということまで決めるものではありません。そのため、常居所地国への返還が命じられた場合、ひとまず子どもを常居所地国に返還し、その後に、常居所地国における法律や手続にのっとり、監護権・親権を決めることになります。

 

⑥返還拒否よりも返還命令の割合の方が高い

法務省の発表によれば、2008年時点での主要締結国の司法判断では、返還命令と返還拒否の割合はおよそ6:4で、返還命令の割合の方が高い結果でした。
ハーグ条約では、国際的な子の連れ去りの防止、迅速な子の返還を実現するため、返還事由をみたす場合、返還拒否事由が認められない限り、返還命令をしなければならないとされています。返還事由をみたすことは申立人において比較的に容易に証明できるのに対し、返還拒否事由をみたすことを相手方において証明することは必ずしも容易でありません。こういったことが、返還命令の割合の方が高い要因になっているものと考えられます。

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