別居後に預貯金の増減があった場合の財産分与の額は?
目次
1 はじめに
財産分与における基準時の問題は、以前のコラムでお話ししました(詳しくはこちら)。
離婚に先行して夫婦が別居している場合において、別居時点で当事者名義の預貯金が存在するとき、別居時の残高が分与対象となるのが原則です。
その一方で、別居が長期化している場合、別居時と現時点とで預貯金残高が変動(増減)していることもよくあります。その場合、どの時点の残高をもって財産分与の対象とするべきでしょうか?
2 別居時より増加している場合
以前のコラムでお話ししたとおり、別居が先行している場合、対象財産確定の基準時は「別居時」となります。
これは、別居した夫婦は別々に経済生活を営むのが通常であり、別居時点をもって夫婦間の「経済的な共同関係」が消滅すると考えられるからです。
この考え方でいくと、別居後に夫婦の一方(あるいは双方)の預貯金残高が増えていたとしても、その増加分は夫婦間の共同関係で築いた財産とは言えず、各々の経済活動で得た財産ということになります。
したがって、別居後にどちらか一方の預貯金残高が増加していたとしても、増加後の残高は財産分与の対象にはならず、別居時の残高の限度で対象になると考えられます。
3 別居時より減少している場合
減少している場合も、基本的には増加している場合と同じで、別居後の預貯金の変動は夫婦間の経済的な共同関係を前提としないため、別居時の残高を対象とするのが原則です。
ただし、預貯金が減少している場合は、減少している原因がなにかという点で結論が変わる可能性があります。
(1)減少の原因が子どもの生活費や教育費である場合
別居後子どもの入学金や授業料などが発生したため、監護親が預貯金でもってこれらを支払ったような場合、仮に夫婦が同居していれば夫婦共有財産から捻出したであろうと考えられます。
そのため、こういった場合には減少後の残高を対象にして財産分与することが考えられます。
(2)減少の原因が遊興費や趣味への支出である場合
この場合は(1)の場合と逆で、夫婦共有財産から捻出すべきものとは言えないため、減少分は考慮されず、原則どおり別居時の残高が対象になると考えられます。
その他のコラム
年末年始休業のお知らせ
誠に勝手ながら、当事務所は、令和2年12月27日(月)から令和3年1月4日(月)まで年末年始休業となります(土日祝日は営業時間外です)。 年内最終営業は12月25日(金)、年始の営業開始は令和3年1月5日(火)です。 期間中は大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜ります様、お願い申し上げます。 なお、メールでのお問い合わせは随時受け付け...
養育費支払いの終期(成年年齢引下げとの関係3)
1 はじめに 前回のコラムに引き続き、成人年齢の引下げによる養育費の終期に関する論点について考えます。 2 民法改正による成人年齢の引下げ後の養育費の支払義務の終期についてどのように考えるべきか? 以前のコラム にあるとおり、養育費支払いの終期は、「子どもが未成熟子から脱した時点」であり、原則として20歳に達した日(の属する月)までと考えられていました。その背景には、子が満20歳に達するまでは未成熟子...
養育費の額の相場はいくら? 子ども1人で離婚した場合の年収別の平均や金額の決め方を解説
離婚した後の養育費の額は子供の人数や夫婦の年収によって異なります。一般的な相場は母子家庭で月額4万円、父子家庭で月額2万円ですが、子供の教育や医療のためにお金がかかる場合は平均以上の金額もあり得ます。養育費の決め方や請求方法について徹底解説します。 子ども1人の夫婦が離婚した場合の養育費の相場はいくら? 平均額や年収別の金額も徹底解説 未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合は、子どもを監護する親は非監護親に...
生命保険等の財産分与
1 生命保険や学資保険等は財産分与の対象となるか? 生命保険については結婚前から加入されている方もいれば、結婚を機に加入する方もいらっしゃると思います。 また、子どもが生まれたことを機に将来の学費に備えて学資保険に加入することもあれば、老後の資金として個人年金保険に加入することもあるでしょう。 これら生命保険等が離婚時に財産分与の対象となるか否かについては、貯蓄性があるか否かによって分かれます...
養育費不払いに対する対応(民事執行法上の財産開示手続)
1 はじめに 前回のコラム(強制執行)はこちらです。 今回は、強制執行に関連して、民事執行法上の財産開示手続についてお話しします。 2 財産開示手続(改正民事執行法196条以下) 財産開示手続とは、権利者の申立てによって、裁判所が養育費の義務者を財産開示期日に呼び出し、裁判所や権利者の前で、所有する財産を開示させる手続です。 権利者が申立てをするため...
