養育費不払いに対する対応(第三者からの情報取得手続) |大田区の離婚・慰謝料請求に強い弁護士

京浜蒲田法律事務所
初回相談無料

[まずはお気軽にご電話ください]

 03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

メールでの相談予約随時受付

養育費不払いに対する対応(第三者からの情報取得手続)

1 はじめに

前回のコラム(民事執行法上の財産開示手続)はこちらです。

 

今回は、民事執行法の改正によって創設された第三者からの情報取得手続(改正民事執行法204条以下)についてお話しします。

 

2 民事執行法改正の背景

公正証書や離婚調停調書で約束した養育費が支払われない場合、権利者としては強制執行を考えることになります。

ですが、これまでの強制執行では、原則的に義務者の預貯金の内容(金融機関名と支店名)は権利者が特定する必要がありました。また、給与債権を差し押さえようとする場合も、義務者の勤務先(給料支払者)は権利者が特定する必要がありました。

 

それゆえに、離婚後の義務者の勤務先や預貯金が分からない場合、強制執行をしたくてもできず、泣き寝入りするしかないという事態が起こっていました。

 

こうした事態を打開するため、令和2年4月1日、改正民事執行法が施行され、新たに第三者からの情報取得手続が運用されることになりました。

 

3 第三者からの情報取得手続

第三者からの情報取得手続とは、養育費の義務者以外の第三者から、義務者の財産に関する情報を取得できる制度です。

 

情報を取得できる第三者とは、①登記所、②市区町村・日本年金機構等、③金融機関(銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、証券会社等)です。

 

①登記所(不動産情報)

登記所に対しては、義務者名義の不動産(土地・建物)がある場合、裁判所の命令により、その不動産の所在地や家屋番号等の情報を取得することができます(改正民事執行法205条)。

ただし、この不動産に係る情報の取得のためには、財産開示手続を申し立てる必要があり、その財産開示手続の期日から3年以内の間に、情報取得の申立てをすることができます。

なお、改正民事執行法は令和2年4月1日から施行されていますが、この登記所からの情報取得については、令和3年5月16日頃から利用できる見込みであるとされています。

 

②市区町村・日本年金機構等(勤務先・給与情報)

市区町村・日本年金機構等に対しては、裁判所の命令により、義務者に対する給料の支給者(義務者の勤務先)に関する情報を取得することができます(改正民事執行法206条)。

なお、勤務先に関する情報取得の申立てができるのは、養育費や婚姻費用などの扶養に関する請求権か、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を有する者に限られます。

また、①と同様、勤務先に係る情報の取得のためには、財産開示手続を申し立てる必要があり、その財産開示手続の期日から3年以内の間に、情報取得の申立てをすることができます。

 

③金融機関(預貯金情報、株式・国債情報)

金融機関に対しては、裁判所の命令により、義務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、残高)、義務者名義の上場株式・国債等の銘柄や数等の情報を取得することができます(改正民事執行法207条)。

①及び②と異なり、預貯金等の情報取得を申し立てる場合、財産開示手続を経る必要はありません。

 

4 さいごに

第三者からの情報取得手続によって、義務者の預貯金情報等が判明した場合でも、それだけで財産差し押さえの効力が及ぶわけではなく、養育費を支払ってもらうためには、別途債権執行等の強制執行手続を取る必要があります。

 

民事執行は専門的要素が強い分野ですので、対応にお困りの方は当事務所の弁護士にご相談ください。

 

 

その他のコラム

離婚訴訟で訴えられた! → 慰謝料・財産分与等で訴え返す方法(反訴・予備的反訴)②

1 はじめに 前回のコラムでは、離婚訴訟における反訴、予備的反訴について解説しました(詳細はこちら)。   今回はその続きです。   2 控訴審での反訴と相手方の同意の要否 通常民事訴訟の控訴審で反訴を提起するためには、相手方の同意がなければなりません(民事訴訟法300条)。なぜならば、反訴については第一審で審理をしていないため、同意なしでの反訴を認めると、相手方の第一審で審理を受け...

不動産収入は婚姻費用・養育費算定の基礎となるか?

1 はじめに 婚姻費用や養育費の算定は、給与所得や事業所得を基礎にして行うことが通常です。   もっとも、中には、夫婦の一方又は双方に不動産収入(家賃収入)が存在することがあります。 この場合、婚姻費用や養育費の算定に当たり、給与所得や事業所得の他に、不動産収入も基礎とすることができるかという問題があります。   この問題に関する裁判例を見てみましょう。   ...

別居後に預貯金の増減があった場合の財産分与の額は?

1 はじめに 財産分与における基準時の問題は、以前のコラムでお話ししました(詳しくはこちら)。   離婚に先行して夫婦が別居している場合において、別居時点で当事者名義の預貯金が存在するとき、別居時の残高が分与対象となるのが原則です。   その一方で、別居が長期化している場合、別居時と現時点とで預貯金残高が変動(増減)していることもよくあります。その場合、どの時点の残高をもって財産分...

浮気・不倫(不貞行為)の慰謝料の相場はいくら?請求方法も解説

配偶者が浮気・不倫(不貞行為)をしていた場合、された側は、その配偶者と不倫相手に対して慰謝料請求を行うことができます。 慰謝料の相場は50万円から300万円と幅が広く、離婚するか、婚姻関係を継続するかにより大きく異なります。 浮気・不倫(不貞行為)の慰謝料の相場が変動する要因や慰謝料の方法なども解説します。   慰謝料を請求できる不貞行為とは? 配偶者が浮気・不倫した場合は、配偶者及び不倫相手に対して慰謝料...

養育費不払いに対する対応(強制執行)

1 はじめに 前回のコラム(履行勧告、履行命令)はこちらです。   今回は、履行勧告や履行命令によっても義務者が養育費の支払いをしない場合、民事執行法上の強制執行についてお話しします。   強制執行の方法としては、主に、不動産執行、動産執行、債権執行があります。   2 不動産執行 不動産執行は、養育費の義務者名義の不動産(土地、建物)がある場合、執行裁判所への...

離婚・男女問題無料相談ご予約。
まずはお気軽にお問合せください

初回相談無料  03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

お問い合わせ