宗教活動
宗教活動は離婚原因となるか?
夫婦の双方又は一方が特定の宗教を信仰し、集会への出席、布教活動への参加などの宗教家活動を行う場合において、これが原因で夫婦関係が悪化したとき、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚原因に当たるか否か問題となります。
前提として、憲法では信教の自由が保障されており、このことは夫婦間でも同様であることから、特定の宗教を信仰したり、宗教活動をすること自体、離婚原因に当たるわけではありません。
その一方で、信仰の自由は、人間の根本にかかわる事柄であり、そうした根本的な部分で相いれない価値観を持っていることは、夫婦間の精神的な結びつきを困難にするとも考えられます。
こうしたことから、一方配偶者が信仰や宗教活動(宗教的行為)に専念するあまり、夫婦間の協力扶助義務に違反し続けたり、子供に対して特定の信仰を教え込むことにより、他方配偶者との婚姻関係が悪化し、回復困難となる場合、「婚姻を継続しがたい事由」として離婚原因になると考えられます。
宗教活動に関する裁判例
特定の宗教の信仰や宗教活動(宗教的行為)について、離婚請求を認めた裁判例として、以下のものがあります。
事案は、婚姻後にエホバの証人に入信した妻が熱心な宗教活動を行い、日本の習俗である仏式の葬儀や法事、節句などの行事に参加することを拒み、幼く判断能力の十分でない子供にも教義を教え儀式に参加させたために、これに不満を持った夫との関係が破綻したというものです。
裁判所は、国民はすべて信教の自由を有し、このことは夫婦間においても同様であるが、夫婦として共同生活を営む以上、夫婦間の協力扶助義務との関係から、宗教的行為に一定の限度があるのは当然であるなどとして、妻の宗教活動(宗教的行為)は、婚姻関係における協力扶助義務の限度を超えたものであるとして、夫の離婚請求を認めました(名古屋地方裁判所昭和63年4月18日判決)。
また、妻が特定の宗教を熱心に信仰していた事案で、裁判所は、夫婦間で信仰の異なることは根源的な問題の対立であり、今後も解消しえないものと認められる結果、それはどちらの側が悪いというようなものではないのであり、夫のみが宗教的寛容さを欠いた有責者であると断ずることはできないとして、夫の離婚請求を認めました(東京地方裁判所平成9年10月23日判決)。