どんな場合に離婚できる?
離婚の方法としては、主に、協議離婚、調停離婚、裁判離婚(和解、判決)があります。
このうち、協議離婚と調停離婚については、その本質は話合いですので、夫婦が離婚に合意する限り、必ずしも法律上の離婚原因が認められる必要はありません。
とはいえ、協議離婚や調停離婚での離婚を考える場合であっても、法律上の離婚原因が認められそうか、言い換えれば離婚訴訟を起こした時に、家庭裁判所が離婚判決を出してくれそうかという見通しを立てることは非常に重要です。なぜなら、離婚判決が得られそうか否かによって、交渉での有利・不利の立場に影響するからです。
例えば、法律上の離婚原因が認められる公算が高い場合、協議離婚や調停離婚(話合いでの離婚)が難しいときには、離婚訴訟を起こせば離婚ができるという方針になります。この方針の下では、協議や調停において自身が考える離婚条件を強気に提示しやすくなり、相手方にもその離婚条件で応じさせやすくなります。
逆に、法律上の離婚原因が認められない公算が高い場合、安易に離婚訴訟を起こすことはできないという方針になります。この方針の下では、協議や調停においてどのような離婚条件であれば相手方に応じてもらえそうかという立場となり、離婚という結論を得るために相当の譲歩や妥協が必要になることもあります。
この法律上の離婚原因について、民法では、次の5つを離婚原因として定めています。離婚訴訟で離婚が認められるためには、少なくともこの離婚原因のどれかに当てはまることが必要となります。
- ①相手方に不貞行為があったとき
- ②相手方から悪意で遺棄されたとき
- ③相手方の生死が3年以上明らかでないとき
- ④相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
相手方に不貞行為があったとき
不貞行為とは、一方配偶者が、自由意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的関係(肉体関係)を結ぶことを言います。
不貞行為について、性交渉より広い意味をいうとする見解もありますが、「不貞行為」すなわち「肉体関係」を指すのが判例の立場です。もっとも、性交渉に至らない性的関係がある場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性はあります。
不貞行為は、一時的か継続的かを問いません。いわゆる風俗通いも、自由意思に基づいて性交を結ぶものである限り、「不貞行為」に当たります。
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相手方から悪意で遺棄されたとき
「悪意の遺棄」とは、一方配偶者が、正当な理由なく、夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たさないことを言います。
正当な理由がないケースとしては、一方配偶者が病弱で看護を要する状況であるにもかかわらず、他方配偶者が十分に看護しないまま別居し、生活費を送金しないケースがあります。
反対に、不貞を繰り返す一方配偶者に反省してもらうため、他方配偶者が家を出たケースなどは、正当な理由があるとされます。
離婚前に別居する夫婦は多いですが、別居原因が一方配偶者のみにあると言えるケースは多くないため、悪意の遺棄が離婚原因と認定されるケースは少ないと考えられています。
相手方の生死が3年以上明らかでないとき
単なる行方不明ではなく、生存の証明も死亡の証明もできない状況が3年以上続いている状況を意味します。住居所が分からなくても、生存自体は推定される場合、この離婚原因には当たりません。
生死不明の状況が続いているため、協議離婚や調停離婚の方法を取ることはできず、離婚訴訟によって離婚を認めてもらうことになります。
相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
統合失調症、躁うつ病等の高度の精神病により、夫婦間の精神的な結びつきが失われ、婚姻関係が破綻した状況を意味します。
アルコール中毒、神経衰弱症、認知症などは、ここでいう「強度の精神病」には当たりません。もっとも、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性はあります。
この「強度の精神病」については、安易に離婚を認めると、精神病をわずらった配偶者が路頭に迷ってしまう可能性があります。そのため、最高裁判所も、精神病にかかった配偶者の今後に係る具体的方途(生活費・療養費の負担、配偶者に代わる保護者の存在、看護体制の整備など)を講じた上でなければ、離婚は許さないという立場をとっています。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
これは、婚姻共同生活が破綻し、その修復(回復)の見込みがないことを意味します。
この離婚原因は抽象的な表現であり、実際の離婚訴訟では、実に様々な理由が離婚原因として主張されています。
例えば、性格の不一致、暴力・DV、モラルハラスメント(モラハラ)、性生活の異常(セックスレス)、犯罪行為、宗教活動、長期間にわたる別居などです。
これらの主な破綻原因については、別のページで解説していますので、そちらをご覧くだ
さい。