犯罪行為
犯罪行為は離婚原因となるか?
配偶者の一方が罪を犯して有罪判決を受けたり、実刑判決を受けて服役することになった場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるものとして、離婚が認められるか問題となることがあります。
犯罪行為については、他方配偶者に対する犯罪行為と、第三者に対する犯罪行為とが考えられます。
他方配偶者に対する犯罪行為や、それによる服役によって、夫婦間の愛情や信頼関係が破綻し、回復の見込みがない場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるといってよいでしょう。
第三者に対する犯罪行為や服役の場合、そのことだけで離婚原因になるというわけではなく、犯罪行為や服役によって婚姻関係が破綻し、修復の見込みがないと言えることが必要となります。
例えば、犯罪行為の種類や重さ、犯罪行為の動機、犯罪行為や服役によって長期間にわたり婚姻共同生活が不可能になる場合、他方配偶者の名誉が傷ついてしまった場合、残された配偶者や家族が経済的に困窮する場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たる可能性が高いと言えます。
犯罪行為に関する裁判例
配偶者の犯罪行為や服役について、離婚請求を認めた裁判例として、以下のものがあります。
夫が婚姻して子供を2人もうけた後に、詐欺罪により2度の実刑判決を受けたという事案において、夫が刑務所に服役中、妻と子供に対する扶養ができず、生活の困難を生じ、家族生活に重大な支障を与えたとして、妻の離婚請求を認めたケースがあります(釧路地方裁判所昭和27年1月17日判決)。
また、夫が婚姻前に詐欺罪等で3回服役していたことを秘して内縁関係となり、その後前科の事実を打ち明けられた妻が同居生活の継続を決意して婚姻したものの、再び夫が詐欺罪を犯し、懲役2年の実刑判決を受けた事案で、裁判所は、夫が一家の生計の支えとなるべき立場にありながら、勤労意欲もなく、無計画で怠惰な生活を改めようとせず、そのうえ、4度目の服役をすることになり、残された家族は分散して生活せざるをえない結果となったとして、妻の離婚請求を認めました(新潟地方裁判所昭和42年8月30日判決)。