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慰謝料を請求する側

不貞慰謝料とは?

「不貞行為」とは、配偶者のいる者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と肉体関係(性交渉)を持つことを言います。
「不貞慰謝料」とは、一方配偶者と異性(第三者)が肉体関係(性交渉)を持ったことによって、他方配偶者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償を言います。
暴力や借金など、婚姻関係の破綻原因が一方配偶者にある場合、離婚慰謝料が問題となることが多いですが、その破綻原因が不貞行為である場合、この不貞慰謝料が問題となります。

不貞慰謝料の請求方法

不貞をした配偶者及び不貞相手(第三者)を問わず、裁判外の示談交渉で不貞慰謝料を請求することが可能です。当事者間で合意に至れば、示談となります。
示談不成立の場合、不貞をした配偶者との関係では、離婚調停や離婚訴訟など、家庭裁判所における手続で不貞慰謝料を請求することになります。これに対し、不貞相手との関係では、貸金請求等通常の民事訴訟と同様に扱われるため、基本的に地方裁判所の訴訟手続で不貞慰謝料を請求することになります(ケースとしては少ないですが、簡易裁判所に民事調停を申し立てることもあります。)。

不貞慰謝料の請求相手

民法上、不貞をした配偶者及び不貞相手(第三者)は共同不法行為となり、不貞をされた配偶者に対して連帯して責任を負うことになります。
不貞をされた配偶者としては、不貞をした配偶者又は不貞相手のどちらか一方に対してだけ請求することも可能ですし、双方に対して請求することも可能です。
不貞発覚後の婚姻関係の継続の有無、不貞をした当事者の資力・財産状況、不貞相手が既婚者であることの認識があったか否かなどの要素を考慮して、誰に請求するか検討することになります。

不貞に関する証拠

不貞をした当事者が不貞行為を否認する場合に備えて、不貞に関する証拠を確保しておくことは非常に重要となります。
不貞の性質上、不貞行為の最中の写真など、直接的な証拠が得られることは少なく、多くは間接的な証拠を積み上げることにより、不貞の事実を証明することになります。
不貞に関する証拠の例として、以下のものがあります。

  • ・性交渉中の様子を撮った写真、動画
  • ・不貞をした配偶者や不貞相手の自白(書面、録音、メール等)
  • ・ラブホテルや不貞相手の家に出入りするところを撮った写真
  • ・不貞(肉体関係)があることを前提としたメール、ラインその他SNSの履歴
  • ・一方配偶者と不貞相手が一緒に写った写真、プリクラ
  • ・夫婦で行ったことのないラブホテルの明細、宿泊(割引)カード
  • ・夫婦間に性交渉がないのに、一方配偶者がコンドームやピルを所持している

不貞慰謝料の額を決めるにあたり考慮される要素

不貞慰謝料の金額を決めるに当たっては、主に以下の要素が考慮されます。
とりわけ、不貞発覚により婚姻関係が破綻(別居、離婚)するに至ったかどうかという点は、結果の重大性にかかわるものであるため、重要視されています。

  • ・婚姻期間の長さ、年齢
  • ・不貞発覚前の婚姻関係の状況
  • ・不貞行為の回数、頻度
  • ・不貞関係の期間の長さ
  • ・不貞関係の発生・継続についてどちらが主導したか
  • ・不貞発覚により婚姻関係が破綻(別居、離婚)したか否か
  • ・不貞をした当事者間での妊娠、出産、認知の有無
  • ・不貞発覚後、不貞関係が継続しているか、解消しているか
  • ・不貞発覚後の不貞当事者の謝罪意思の有無、態度

不貞慰謝料の相場

民法上や最高裁判所の判例上、不貞慰謝料の金額について確たる基準は存在していません。
もっとも、不貞慰謝料に関する裁判例は相当な数存在しており、これらの裁判例を総合すると、概ね100~300万円前後が不貞慰謝料の相場であると考えられます。
この金額の幅のうち、どの程度の金額が認められるかはケースバイケースですので、一概には言えませんが、不貞が原因で別居、離婚するに至った場合は高額に上りやすく、別居、離婚に至らない場合は低額に抑えられやすい傾向にあります。

求償権の放棄

民法上、不貞をした配偶者及び不貞相手(第三者)は共同不法行為となり、不貞をされた配偶者に対して連帯して責任を負うことになります。
その一方で、不貞をした配偶者又は不貞相手の一方が慰謝料をまとめて支払った場合、支払った者は不貞の他方当事者に対して、当事者間の責任割合に基づいて、慰謝料の負担を求めることができます。これを求償権と言います。
例えば、不貞相手が慰謝料150万円を支払った場合において、不貞をした配偶者と不貞相手の責任割合が50%:50%であるとき、不貞相手は不貞をした配偶者に対して、150万円の50%に相当する75万円の負担を求めることができます。
この求償権は、不貞発覚後も婚姻関係を継続する場合に問題となりやすいです。というのも、夫婦間の財布の紐が一つの場合、不貞相手から不貞慰謝料の支払いを受けても、その簿に不貞相手から不貞をした配偶者に対して求償権を行使されると、紛争の蒸返しになるとともに、慰謝料額が減ってしまうからです。
こうしたことから、婚姻関係を継続する場合、示談するに際して、慰謝料額の合意だけでなく、求償権の放棄(求償放棄)も盛り込むケースが多いです。

接触禁止条項(違約金条項)

接触禁止とは、不貞相手と不貞をした配偶者、不貞相手と不貞をされた配偶者が、偶発的な場合や業務上やむを得ない場合を除いて接触しないことを言います。不貞発覚後も婚姻関係を継続する場合に、不貞相手と不貞をした配偶者の関係を断ち切るために、この接触禁止を約束するケースが多いです。
求償権の放棄と同様、接触禁止についても、示談するに際して、慰謝料額の合意に併せて、接触禁止を盛り込むケースが多いです。接触の態様については、直接会う場合と、電話やメール等の間接的な場合とがありますが、一切の態様を含めて接触禁止とし、違反した場合には罰則として違約金を支払うという内容にするケースが非常に多いです。

さいごに

不貞の被害を受けた配偶者の中には、弁護士を立てずにご自身で対応される方もいらっしゃいます。しかし、ご自身で対応する場合、対応それ自体が強いストレスに感じるだけでなく、感情を抑えきれず、不貞相手の職場に乗り込んだり、SNS上で不貞をした当事者を誹謗中傷するといった状況に至ることがあります。そうなると、逆に相手方から損害賠償請求をされるなど、より紛争が複雑化してしまうおそれがあります。
その点、弁護士が代理人となることで、ご本人が相手方と直接話し合いをする必要がなくなります。それだけでなく、弁護士が慰謝料請求の意思を示すことで相手方に本気度が伝わるとともに、冷静かつ客観的な視点も持って対応することにより、解決に向けて話が進む可能性が高まります。
京浜蒲田法律事務所の弁護士は、慰謝料を請求する側、請求される側のどちらについても様々な経験を有しておりますので、不貞慰謝料請求についてお悩みの方は、当事務所の弁護士にご相談ください。

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