不動産収入は婚姻費用・養育費算定の基礎となるか? |大田区の離婚・慰謝料請求に強い弁護士

京浜蒲田法律事務所
初回相談無料

[まずはお気軽にご電話ください]

 03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

メールでの相談予約随時受付

不動産収入は婚姻費用・養育費算定の基礎となるか?

1 はじめに

婚姻費用や養育費の算定は、給与所得や事業所得を基礎にして行うことが通常です。

 

もっとも、中には、夫婦の一方又は双方に不動産収入(家賃収入)が存在することがあります。

この場合、婚姻費用や養育費の算定に当たり、給与所得や事業所得の他に、不動産収入も基礎とすることができるかという問題があります。

 

この問題に関する裁判例を見てみましょう。

 

2 裁判例

(1)東京高裁昭和57年7月26日決定

夫が6億円以上の財産を相続し、その相続財産(特有財産)の一部を貸与して賃料を得ていた事案です。

裁判所は、「婚姻費用の分担額を決定するに際し考慮すべき収入は、主として相手方(夫)の給与所得である」と判断し、婚姻費用の算定に当たり、特有財産から生じた賃料収入を基礎としませんでした。

その理由としては、「専ら相手方(夫)が勤務先から得る給与所得によって家庭生活を営み、相続財産…(で)得た賃料収入は、直接生計の資とはされていなかった」と述べられています。

 

(2)東京高裁昭和42年5月23日決定

妻が特有財産である不動産から月3万円の賃料収入を得ていた事案です。

裁判所は、「特有財産の収入が原則として分担額決定の資料とすべきではないという理由…はない。…賃料収入を考慮して婚姻費用の分担額を決めることは当然のことである」と述べ、婚姻費用算定の基礎として、妻の特有財産からの賃料収入を考慮に入れました。

 

(3)東京高裁平成28年9月14日決定

妻から夫に対して婚姻費用の分担を求めた事例で、夫には2000万円を超える給与収入があったほか、不動産収入や配当収入もあり、これらを加えた収入総額は4000万円近くに上りました。

裁判所は、給与収入だけでなく、不動産収入や配当収入も基礎収入として考慮した上で、婚姻費用を算定しました。

 

 

3 本問題に対する考え方(私見)

ご覧のとおり、本問題に関して裁判所の判断は統一しているわけではなく、個々の事案によって判断が分かれる可能性があります。

 

少なくとも、この問題を考えるに当たっては、賃料収入を生み出す不動産が共有財産か特有財産か、その賃料は夫婦(家族)の生活費の原資になっていたか否か、といった点が重要になると考えられます。

 

すなわち、不動産が共有財産(例えば、婚姻後に投資用としてマンションを購入したようなケース)で、その家賃収入が給与収入とともに夫婦(家族)の生活費となっていたような場合には、当該家賃収入も婚姻費用・養育費の基礎になる可能性が高いと思われます。

 

反対に、不動産が特有財産(例えば、夫婦の一方が相続によって貸マンションを相続したようなケース)で、その家賃収入が夫婦(家族)の生活費の原資となっていなかった場合には、東京高裁昭和57年7月26日決定のように、当該家賃収入は婚姻費用・養育費の基礎にはならないという判断になる可能性が高くなると思われます。

 

もっとも、特有財産である不動産から生じた家賃収入について、財産分与で清算を求めることができるかについては、また別の問題として考える必要があります。

 

 

 

 

その他のコラム

養育費不払いに対する対応(強制執行)

1 はじめに 前回のコラム(履行勧告、履行命令)はこちらです。   今回は、履行勧告や履行命令によっても義務者が養育費の支払いをしない場合、民事執行法上の強制執行についてお話しします。   強制執行の方法としては、主に、不動産執行、動産執行、債権執行があります。   2 不動産執行 不動産執行は、養育費の義務者名義の不動産(土地、建物)がある場合、執行裁判所への...

面会交流の第三者機関(支援機関)とは?離婚後の親子の交流、支援の内容、相談の方法を解説

面会交流の第三者機関は、離婚後の未成年の子どもと非監護親の交流を支援するための機関です。 面会交流の場に第三者である支援者が立ち会ったり、子どもの受け渡しの援助や連絡調整を行います。 面会交流の第三者機関の支援内容や利用すべきケースについて解説します。   面会交流の第三者機関(支援団体)とは?支援内容や利用すべきケースを解説 面会交流は、離婚後に未成年の子どもと一緒に暮らしていない親(非監護親)と子どもが...

財産分与で控訴するかは慎重に(財産分与における不利益変更禁止の原則の不適用)

1 不利益変更禁止の原則とは? 民事訴訟法304条は、第二審(控訴審)における判決について、「第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、することができる」と規定しています。   民事訴訟では、当事者が申し立てていない事項について判断をすることはできないとされています(民事訴訟法246条。これを処分権主義といいます。)。 この原則に基づき、第二審(控訴審)において審理・判断の対象と...

財産分与における「基準時」とは?

1 はじめに 財産分与という言葉にはいくつか種類がありますが(清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与)、最もポピュラーなのは清算的財産分与です。 清算的財産分与とは、離婚時又は離婚後に、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産について、夫婦間で分配し、清算する制度です。   2 財産分与における2つの基準時 財産分与においては、「基準時」という問題があります。   具体的に言...

新型コロナウィルス感染症を受けての当事務所の対応について

新型コロナウィルス感染症の感染拡大を受け、当事務所では、感染拡大防止のため、以下の対応を実施いたします。 ・体調不良、発熱、咳がでる状態でのご来所はお控え頂きます様、お願いいたします。 ・来所相談の場合、マスクやそれに準じる物の着用をお願いいたします。 ・相談スペースにアルコール消毒液を設置しておりますので、ご利用ください。 ・1回の相談事に、相談スペースの洗浄・除菌を行います。 ・当事務所の弁護士及びスタッ...

離婚・男女問題無料相談ご予約。
まずはお気軽にお問合せください

初回相談無料  03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

お問い合わせ