離婚協議の重要性と円満な離婚のためのコツ
目次
離婚する夫婦の大半は、協議離婚と言い、話し合いにより離婚しています。
しかし、離婚はしたものの離婚後に約束していた、養育費を支払ってくれないとか、面会交流を拒否されるといったトラブルが後を絶ちません。
焦って離婚したために、財産分与もしていないこともあります。
こうした離婚にまつわるトラブルを回避するためには、円満な離婚を目指すのが最善です。
この記事では、離婚協議の重要性と円満な離婚のためのコツについて紹介します。
1.円満離婚とは
離婚というと、夫婦で言い争いになったり、大喧嘩した挙句、修復不能の状態になって別れる。
そして、離婚の条件を巡って離婚後も争い続けるもの。
というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、話し合いにより離婚する場合は、円満離婚になる夫婦もいます。
円満離婚とは、夫婦が離婚を決意した後で、離婚条件の取り決めでも争いを起こすこともなく、お互いに憎しみ合ったりせず、双方が納得して離婚に至る状態のことです。
離婚後も、仲の良い友達として会い続ける人たちもおり、仲良し離婚とも呼ばれることがあります。
離婚を検討している方なら、誰しもスマートに円満離婚するのが理想だと考えるのではないでしょうか。
2.離婚協議が円満な離婚の鍵
円満な離婚をするためには、離婚協議が重要です。
離婚協議の場で夫婦がお互いに納得がいくまで話し合い、離婚の条件の認識を一致させたうえで、離婚に必要な手続きを滞りなく終えることで円満な離婚が可能になります。
そのためには、駆け足で離婚協議を進めるのではなく、時間をかけて話し合い、離婚に向けて条件を一つ一つクリアするという、丁寧な手順を踏むことが重要です。
また、お互いに憎しみ合うことなく、相手を気遣い、時には妥協するという心構えも必要です。
離婚協議で話し合うことは、離婚後の生活に大きな影響を及ぼします。
離婚した後で、「離婚協議で話し合っておくべきだった」と後悔するような状況では、円満な離婚はできません。
3.円満な離婚のために離婚協議で話し合うべきこと
円満な離婚をするために離婚協議ではどのようなことを話し合うべきなのか見ていきましょう。
3.1親権
夫婦の間に未成年者の子どもがいる場合、夫婦のどちらが親権者になるのかを決めなければなりません。
親権者とは、離婚後も子どもを監護し、養育する人のことです。
一般的には、子どもと同居し、子育てを実際に担うことになります。
離婚協議では、どちらが子どもの親権者になるべきかを巡り、紛糾することが多いです。
夫婦のどちらも子どもだけは絶対に手放したくないと考えるのが普通です。
しかし、円満な離婚を目指すのであれば、自分の気持ちに固執するのではなく、「どちらと一緒に過ごしたほうが子どものためになるのか」を冷静に考えることが重要です。
3.2養育費
夫婦の間に未成年者の子どもがいる場合、子どもを育てるための養育費をどのように負担するのかは離婚協議の重要なテーマになります。
養育費は、学費だけでなく、衣食住にかかる費用や医療費、その他の教育費など、子どもが成人し自立するまでかかる一切の費用を含みます。
養育費は、離婚後も夫婦の双方で負担すべきもので、親権者だけが負担するものではありません。
離婚協議では夫婦のお互いの年収や子どもの将来を見越しながら、現実的な養育費を算出して、負担方法を決めなければなりませんが、計算が難しい場合は、裁判所が公表している養育費算定表を用いるのが一般的です。
円満な離婚を目指すのであれば、養育費の話し合いも、相手に多く負担させようとか、できるだけ負担を減らそうといった自分の懐だけを見るのではなく、相手の経済状況を慮って、お互いに負担しあう姿勢を示すことが大切です。
3.3面会交流
離婚後に、子どもが親権者と暮らす場合でも、親権者とならなかった親も定期的に子どもと会う権利があります。
これを面会交流と言います。
面会交流は、親の権利というよりも、子どもが離婚後会えなくなる親からも愛されていることを確認する子どもの権利という側面が強いです。
そのため、面会交流について話し合うときは、夫婦がお互いの感情をぶつけ合うのではなく、どのような取り決めをするのが子どものために最善なのかを念頭に置くことが大切です。
面会交流に関して、子どものことを考えず、親が感情をぶつけ合う事態になると、子どものためになりません。
その意味でも、面会交流に関して納得したうえで、円満な離婚を目指すべきなのです。
3.4慰謝料
慰謝料は、例えば、夫婦の一方が不倫などの不貞行為をしていた場合に、他方が被った精神的苦痛などについて損害賠償を求めるものです。
不貞行為のほか、DV、モラハラ、悪意の遺棄などを行っていた場合も慰謝料請求ができます。
一般的には、こうした行為があった夫婦が円満離婚に至るケースはあまりありませんが、時間をおいて冷静に話し合える状況であれば、自分の非を認めて謝罪し、その分の慰謝料を支払うという形で決着することも考えられます。
一方、性格の不一致など、どちらに非があるとも言えない状況での離婚の場合は、相手に慰謝料を請求することは難しくなります。
3.5財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた共同の財産を分け合うことです。
例えば、夫婦が住む家が夫の単独名義になっていた場合でも、夫の収入だけで家を建てたわけではなく、妻も一定額の資金を出していることもありますし、妻の助けがあったからこそ、夫が家を買えるほどの収入を得られたという面もあります。
こうしたことから、夫婦が離婚する際は、夫婦の半分に分けるのが原則とされています。
もちろん、分け前は、離婚協議で自由に決めることができます。
相手の経済状況を慮って少し多めに相手に譲ると言った配慮ができれば、円満な離婚がしやすくなります。
離婚協議の際に財産分与でもめてしまうようでは、円満な離婚は難しいです。
3.6年金分割
夫婦が婚姻中に収めた厚生年金の保険料に相当する部分を離婚時に分割し、夫婦のそれぞれの年金とする制度を年金分割と言い、財産分与の一環として行われます。
例えば、熟年離婚をするケースで、夫が厚生年金に入り、妻が国民年金の第3号被保険者だった場合に年金分割を行うと、夫の厚生年金の一部を妻に譲る形になり、夫が将来もらえる年金額は減り、妻の年金額は増えることになります。
年金分割も2分の1に分けるのが原則ですが、合意分割制度を利用できる分については、分割の割合を夫婦で決めることもできます。
4.離婚協議で円満な離婚を目指すべき理由
上記で紹介したように、離婚協議で話し合うべきことは、未成年の子どもの将来、離婚後の夫婦それぞれの生活に重大な影響を及ぼすものばかりです。
こうした話し合いを夫婦がいがみ合っている中で冷静に行うことは難しいですし、ろくに話し合わないままに、一方的に決めたりすると、将来、後悔しますし、相手が養育費を支払ってくれないと言ったトラブルになりやすいものです。
その点、長い時間をかけてゆっくりと話し合った末に、円満離婚した場合は、後悔することは少ないですし、トラブルになることも少ないものです。
5.離婚協議で円満な離婚をするメリット
離婚協議で円満な離婚をするメリットをまとめると次のようになります。
5.1離婚まで時間がかからない
離婚をすると決めた場合は、円満な離婚を目指して、徹底的に話し合うことが、結局は早期の離婚につながりやすいものです。
話し合いを拒否したり、揉める状態が続くといつまでも離婚はできないものです。
5.2離婚に必要な費用が少なくなる
離婚の方法としては、協議離婚のほか、調停離婚、裁判離婚といった手段がありますが、協議離婚以外の方法はいずれも裁判所を交えた話し合いですので、費用が掛かります。
裁判所に支払う手数料は大したことはありませんが、弁護士に代理を頼んだ場合は結構な費用が掛かります。
また、離婚が成立しない段階で別居することになった場合は、婚姻費用の負担が必要になるなど、何かと費用が掛かるものです。
5.3離婚後にトラブルになりにくい
離婚後のトラブルとしては、養育費の未払い、面会交流の拒否などが挙げられますが、円満離婚をした場合は、お互いに納得していることが多く、こうしたトラブルになりにくいです。
5.4ストレスが少ない
離婚すること自体、多大なストレスを伴うものですが、円満離婚ならば、トラブルが少ないために、そのストレスを軽減できる点もメリットです。
6.円満な離婚をするための離婚協議での心構え
円満な離婚をするためには、離婚協議の場において、夫婦で徹底的に話し合うことが重要です。
その際は次の点を心がけましょう。
6.1離婚を急がない
離婚を決めたら一日でも早く離婚したいと考える方も多いかもしれませんが、円満な離婚を目指すならば、焦らないことが大切です。
離婚の条件や決めるべきことは時間をかけてじっくり決めていくべきですし、離婚後の生活のための準備期間も長ければ長いほど、必要な資金を貯められますし、仕事なども見つけやすいものです。
6.2配偶者の問題点ばかりを指摘しない
離婚に至るのは、夫婦がお互いに何らかの不満を抱いていたり、性格が一致しなかったりといった何らかの問題を抱えているものです。
ただ、溜まった不満をぶつけ合うばかりでは、円満な離婚に向けた話し合いは難しくなるものです。
離婚後は他人になるわけですから、余計なことは言わないようにすることが大切です。
6.3離婚することをなるべく広めない
離婚を決断する時は、誰かに相談したくなるのは当然です。
しかし、不用意に離婚することを話すと、話した内容が配偶者にも知れてしまう可能性もあります。
夫婦しか知らない内容をほかの人から聞かされると、不愉快ですし、その結果、円満な離婚が難しくなることもあります。
6.4離婚協議で決めたことは公正証書にする
円満な離婚でも離婚協議で決めた内容は、文書の形で残すことが大切です。
離婚協議の文書としては、公証人役場で作成する「離婚給付等契約公正証書」が最も確実な文書で、仮に相手が決めた事項を守らなかった場合は、公正証書に基づいて強制執行等を行うこともできます。
円満な離婚であれば、相手が養育費を支払うといった約束を守らないことは少ないですが、お互いに気持ちよく離婚するためにも、公正証書を作成しておくべきです。
7.まとめ 円満離婚は協議離婚の理想の形
離婚協議で話し合うべきことは、離婚後の生活や子どもの将来のために重要なことばかりです。
こうした重要な協議内容は、夫婦でじっくり話し合って決めるべきですし、決めた内容は、離婚後に守ってもらわなければ意味がありません。
そのためには、円満な離婚が最も理想的な形になります。
円満な離婚を目指すためにはどうしたらよいのか悩んでいる方は、当事務所にご相談ください。
離婚問題に詳しい弁護士が親身にアドバイスさせていただきます。
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