DV等被害者への支援措置(住民票等の閲覧制限)2
前回のコラム(詳しくはこちら)に続き、DV等被害者への支援措置についてお話しします。
1 閲覧制限の対象
支援措置によって加害者による閲覧・交付が制限(拒否)されるものは、次のとおりです。
①住民基本台帳
②住民票(現住所地)
③住民票除票(前住所地)
④戸籍の附票(現本籍地)
⑤戸籍の附票(前本籍地)
現在の住民票や戸籍の附票が閲覧できなくても、前住所地の住民票除票や前本籍地の戸籍の附票が閲覧できてしまうと、結局現在の住居所地が判明してしまうおそれがあるため、これらも制限の対象となります。
支援措置の確認(決定)を行った市区町村は、状況に応じて、申出者の前住所・転出先・本籍地の市区町村宛てに協力依頼を行います。
自治体によっては、上記書類以外の書類についても閲覧制限の対象とする例もあるようです(例:住民異動届)。
2 なりすまし等の防止
支援措置によって加害者本人からの閲覧・交付請求は制限されることになりますが、加害者がDV等被害者になりすまして住民票の交付等を請求する可能性があります。また、加害者からの依頼を受けた第三者が住民票の交付等を請求する可能性もあります。
そのため、申出者(DV等被害者)からの交付請求であっても、加害者によるなりすましの防止のため、代理人や郵送による請求は認められません。
また、第三者からの交付請求の場合も、厳格な本人確認、利用目的(請求事由)の厳格な審査が行われることになります。
3 支援措置期間
支援措置の期間は、支援措置の必要性を確認(決定)した時から1年間です。
期間満了の1か月前から、期間延長の申出が可能です。延長後の期間は、延長前の期間の満了日翌日から起算して1年となります。
延長の申出がない場合、期間の満了をもって支援措置は終了します。
4 さいごに
この支援措置は、あくまでも住民票や戸籍の附票等の閲覧・交付を制限するにとどまり、加害者の行動そのものを止めることができるわけではありません。
そのため、過去のDVやストーカーの内容に照らし、支援措置をしても生命や身体に対する危険があると考えられる場合、DV保護シェルターの利用等を検討する必要があります。
その他のコラム
夏季休業のお知らせ
誠に勝手ながら、当事務所は、令和4年8月10日(水)から8月16日(火)まで夏季休業となります。 期間中は大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜ります様、お願い申し上げます。 なお、メールによるお問い合わせは随時承っております。詳しくはお問い合わせのページをご確認ください。 ...
住宅ローンは婚姻費用の算定で影響がある? 離婚に詳しい弁護士に相談すべきケースを解説
婚姻費用は、夫婦が離婚前に別居しているときに、収入の少ない方が相手方に請求できる費用です。 夫婦のうち夫が住宅ローンを払い続け、自宅に妻が住んでいるケースでは、夫が婚姻費用と住宅ローンを二重負担することもあります。 このような場合、婚姻費用から住宅ローンの分を控除する等の調整は可能なのでしょうか?詳しい事例を挙げて解説します。 婚姻費用の算定時に住宅ローンは影響するのかどうか解説します 婚姻費用は、離婚...
不倫・浮気の慰謝料の相場はいくら?法的に認められる金額と請求の条件を解説
配偶者が不倫・浮気した場合に請求できる慰謝料の相場は、50万円〜300万円と金額の幅が広いです。 慰謝料請求をするための条件、額が高額になる事例について解説します。 不倫・浮気・不貞行為の慰謝料の相場はいくら? 増額される条件を解説します。 不貞行為があった場合の慰謝料の相場は総額で100万円〜300万円です。 また、不倫相手だけへの慰謝料請求の相場は、50万円〜150万円程度です。 ...
熟年離婚で将来の年金はどうなる?┃年金分割の制度・手続きと注意点を分かりやすく解説
はじめに 「熟年離婚を考えているが老後の年金はどうなるのだろう」と不安な方も多いでしょう。熟年離婚時の年金分割について、分割方法や注意点を把握することは大切です。 特に専業主婦(主夫)の場合、長い結婚生活後の年金が重要な生活資金となるため、しっかりと制度を理解しておくことが求められます。 本記事では年金分割に関する基本的な制度や手続きを分かりやすく解説し、熟年離婚を検討する方々が役立てられる情報を紹介します。 ...
財産分与で控訴するかは慎重に(財産分与における不利益変更禁止の原則の不適用)
1 不利益変更禁止の原則とは? 民事訴訟法304条は、第二審(控訴審)における判決について、「第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、することができる」と規定しています。 民事訴訟では、当事者が申し立てていない事項について判断をすることはできないとされています(民事訴訟法246条。これを処分権主義といいます。)。 この原則に基づき、第二審(控訴審)において審理・判断の対象と...