面会交流の間接強制が認められるケースとは? |大田区の離婚・慰謝料請求に強い弁護士

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面会交流の間接強制が認められるケースとは?

離婚後の子どもとの面会交流に監護親が応じない場合は、間接強制によって実現することもできます。
弁護士に相談し面会交流調停を申し立てて、4つの要件を満たした調停調書や審判書を作成することがポイントです。
 
面会交流の強制執行(間接強制)が認められるケースについて解説します
離婚後の子どもとの面会交流を非監護親が求めても、監護親が拒否する場合に、強制執行により、面会交流を実現できるのでしょうか?
結論から言うと、面会交流の強制執行(間接強制)も認められます。
ただ、前提として、面会交流調停を申し立てて、調停調書や審判書を作成していなければなりません。
さらに、調停調書や審判書の内容が間接強制を行えるものとして4つのポイントを満たしたものであることが求められます。
 

1.面会交流とは

面会交流とは、離婚の際に子どもと同居せず、子どもを監護養育しないことになった非監護親が定期的に子どもと面会し、一緒に遊んだり、話したりして交流する権利のことです。
非監護親の権利であり、また、子どもが非監護親と会う権利という側面もあります。
面会交流は、離婚時に共同親権とせず、単独親権とした場合において、親権者とならなかった非監護親にも認められる権利です。
 
面会交流を行うためには、離婚時に面会交流の取り決めを親の間で行っておくのが一般的ですが、この取り決めを行ったにも関わらず、監護親(多くは母親側)が非監護親(多くは父親側)に子どもを会わせないこともあります。
このような場合、強制執行(間接強制)を申し立てることで、非監護親が子どもと会うことができるのかが問題になります。
 

2.強制執行とは

強制執行とは、債務名義を有する債権者が裁判所に対して債権の実現を求めて申し立てを行い、裁判所の命令を受けた執行官が債務者の財産を差し押さえるなどして債権の回収を図る制度です。
債務名義とは、判決書、調停調書、審判書、和解調書、強制執行認諾条項の付いた公正証書が代表例です。
また、強制執行により実現する債権とは、金銭消費貸借契約に基づく債権が代表例で、借金を返さない債務者の財産を差し押さえて競売する形で借金を回収することになります。
こうした強制執行方法を直接強制といいます。
 

3.間接強制とは

強制執行には、いくつかの方法があり、今紹介した直接強制の他に、代替執行、間接強制の方法があります。
 
代替執行とは、例えば、老朽化した危険な建物の所有者が建物の解体を命じられたのに解体しない場合に、行政が所有者に代わって、建物を解体し、その費用を所有者から取り立てると言ったような場合に用いられる方法です。
 
間接強制は、何かをすることを命じられている債務者に対して、それを行う期限を設定し、期限までに行わない場合は、罰金や違約金のような形で債務者に対して間接強制金の支払いを命じるというものです。
 

4.面会交流と間接強制の関係

では、面会交流の強制執行はできるのでしょうか?
結論から言うと、面会交流の強制執行は可能ですが、認められている強制執行方法は、間接強制のみです。
 
裁判所に面会交流の強制執行を申し立てても、裁判所から執行官が派遣されて、監護親の元から子どもを連れ出して、非監護親に会わせるといった直接強制の方法は取られません。
 
裁判所が監護親に対して面会交流に応じるように命じたうえで、応じなかった場合は、ペナルティとして、非監護親に対して一定の間接強制金を支払うように命じるという間接強制の方法が用いられます。
 

5.面会交流で間接強制が認められる場合

面会交流の間接強制は、面会交流の取り決めを行っていることが原則です。
また、裁判所に間接強制の申立を行うわけですから、その取り決めは口約束ではなく、文書の形で残していることが前提になります。
さらに、文書は債務名義と言えるものでなければなりません。
離婚に関する取り決めは、強制執行認諾条項の付いた公正証書で作成されることがありますが、公正証書が債務名義となるのは養育費の支払い等だけです。
面会交流の間接強制を申し立てるための債務名義は、家庭裁判所における面会交流調停の調停調書または審判書になります。
そして、その調停調書または審判書において、間接強制できるほどに具体化された内容になっているかがポイントになります。
 
では、どの程度、面会交流の内容が具体化されていればよいのかについては、最高裁判所が基準を示しています。
「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがない」場合は、面会交流の間接強制が認められるとしています(最決平成25年3月28日 民集 第67巻3号864頁)。
 
つまり、面会交流に関して、
 

  • 1. 日時
  • 2. 頻度
  • 3. 面会交流の時間の長さ
  • 4. 子の引渡しの方法

 
の4点が取り決めの中に明記されていて、かつ、文書化されているかどうかがポイントになります。
 
参考判例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=83152
 

5.1面会交流の間接強制が認められた事例の取り決め内容(最決平成25年3月28日 民集 第67巻3号864頁)

面会交流の間接強制が認められた事例の取り決め内容は次のようなものでした。
 
面会交流の日程等は、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は、子の福祉を考慮して非監護親の自宅以外の非監護親が定めた場所とする。
子の受渡場所は、監護親の自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは、所定の駅改札口付近とし、監護親は、面会交流開始時に、受渡場所において子を非監護親に引き渡し、子を引き渡す場面のほかは、面会交流に立ち会わず、非監護親は、面会交流終了時に、受渡場所において子を監護親に引き渡す。
 
読み解くと以下のとおり、4点が取り決め内容に明記されていることがわかると思います。
 

  • 1. 日時 第2土曜日の午前10時から
  • 2. 頻度 月1回
  • 3. 面会交流の時間の長さ 午前10時から午後4時
  • 4. 子の引渡しの方法 所定の駅改札口付近等

 

6.面会交流で間接強制が認められない場合

面会交流で間接強制が認められない場合としては、そもそも、面会交流の取り決めをしていない場合や、口約束だけで文書化も調停も行っていない場合が挙げられます。
また、調停調書や審判書を作成していても、上記で紹介した4点が不明確な場合は、間接強制ができません。
 

6.1面会交流で間接強制が認められなかった事例1(最決平成25年3月28日  集民 第243号271頁)

こちらの事例では、調停調書により次のような取り決めを行っていました。
 
面会交流は、2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。
監護親は、上記の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を非監護親に会わせ、非監護親は終了時間に同場所において子を監護親に引き渡すことを当面の原則とするが、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、監護親と非監護親間で協議して定める。
 
4点の取り決め内容を読み解くと以下のとおりになります。
 

  • 1. 日時 第3土曜日の翌日午前11時から
  • 2. 頻度 2箇月に1回程度
  • 3. 面会交流の時間の長さ 半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は……
  • 4. 子の引渡しの方法 所定の喫茶店の前で……

 
この事例の取り決め内容は、一見して、詳細に取り決めているように見えますが、面会交流の時間の長さについて、「最初は1時間程度から始めることとし」以下、子の引渡しの方法についても、「当面の原則とするが」以下の一文により、却ってあいまいになってしまっているため、最高裁判所も、十分に特定されているとはいえないとして、間接強制を認めませんでした。
 
参考判例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=83153
 

6.2 面会交流で間接強制が認められなかった事例2(最決平成25年3月28日  集民 第243号261頁)

こちらは審判書が作成された事例です。
 
面会交流の頻度は1箇月に2回、土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨の審判書が作成された。
 

  • 1. 日時 土曜日又は日曜日
  • 2. 頻度 1箇月に2回
  • 3. 面会交流の時間の長さ 1回につき6時間
  • 4. 子の引渡しの方法 不明

 
この事例では、審判書が作成されましたが、子の引渡しの方法について定めていなかったために、最高裁は間接強制は認められないと判断しました。
審判書は裁判官が出すものですが、裁判官が出したものだからと言って、必ずしも、間接強制が認められる内容になっているとは限らないということです。
面会交流調停では、弁護士にサポートしてもらい、調停調書や審判書の内容が間接強制が認められるものになっているかどうかチェックしてもらうことが大切です。
 
参考判例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=83151
 

7.面会交流の間接強制に従わない場合は?

裁判所から面会交流について間接強制の命令が出たのに、監護親が命令に従わなかった場合は、監護親は非監護親に対して、裁判所が命じる一定額の間接強制金を支払わなければなりません。
監護親が任意に間接強制金を支払わない場合は、その回収については、直接強制の手段を利用できます。
 

8.子どもが面会交流を拒否している(嫌がっている)場合でも間接強制ができるのか?

監護親が面会交流を拒否する理由としてよく持ち出される言い訳が、「子どもが面会交流を拒否している(嫌がっている)」というものです。
本当に拒否しているならまだしも、子どもの意志とは無関係に監護親がそのような言い訳をしていることもあります。
この場合、間接強制は認められないのでしょうか?
結論から言うと、「子どもが面会交流を拒否している(嫌がっている)」ことは、間接強制を妨げる理由にはならないというのが最高裁判所の見解です(最決平成25年3月28日 民集 第67巻3号864頁)。
 
よって、監護親が「子どもが面会交流を拒否している(嫌がっている)」と言い訳したとしても、間接強制自体は認められます。
 
なお、本当に子どもが面会交流を拒否している(嫌がっている)のであれば、面会交流に関して、監護親と非監護親の間で協議し直すべきで、裁判所も、「面会交流を禁止し、又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由」になるとしています。
 

9.面会交流の間接強制の申立ての流れ

面会交流の間接強制の申立ての流れについて、調停調書または審判書を得るための流れと面会交流の間接強制の申立ての流れに分けて解説します。
 

9.1面会交流に関する調停調書または審判書を得るための流れ

面会交流の間接強制を行う前提として、面会交流に関する調停調書または審判書が作成されていなければなりません。
監護親が面会交流を拒否している場合は、まず、家庭裁判所に対して、子の監護に関する処分(面会交流)調停事件を申し立てます。
 
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
申し立てに必要な書類は、申立書及びその写し1通と未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)です。
 
面会交流調停では、裁判官のほか、2名の調停委員を交えて話し合いを行う形になります。
実際には、申し立てをした親と一方の親が相互に調停委員と話し合い、お互いの主張は、調停委員に対して伝える形になります。
また、必要に応じて、家庭裁判所調査官(調査官)が子どもとの面会など、必要な調査を行います。
面会交流調停はすぐに話がまとまるとは限らず、5〜6回程度開催されるのが一般的で、期間としては、約1年かかります。
 
面会交流調停の結果、話がまとまれば、調停調書が作成されます。
調停調書には、日時、頻度、面会交流の時間の長さ、子の引渡しの方法の4点を中心に取り決め内容が記載されます。
面会交流調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判を行い、審判書を作成します。
 
このようにして作成された調停調書または審判書に記載されたルールにのっとって、まずは、面会交流を試みます。
 

9.2面会交流の間接強制の申立ての流れ

調停調書または審判書に記載されたルールが守られず、監護親が一方的に面会交流を拒否している場合は、間接強制を行うことができるようになります。
 
間接強制の申し立ては家庭裁判所に対して、申立書や調停調書、審判書を提出して行います。
申し立てが受理されると、家庭裁判所の裁判官が、面会交流の義務者(一般的には監護親)から意見を聞くための審尋という手続きを行います。
その結果、監護親の面会交流拒否に理由がないと判断された場合は、間接強制の申立てを認容する決定を下します。
具体的には、監護親に対して、「面会交流に応じないときには1回あたり〇万円を支払え」といった間接強制金の支払いを命じる決定を出すわけです。
 

9.3面会交流の間接強制がなされても拒否される場合は?

面会交流の間接強制は、面会交流を拒否するなら間接強制金の支払いを命じるというものですから、監護親が金銭を支払ってでも、面会交流だけは拒否するという頑なな態度を取り続ける限り、面会交流の実現は不可能となります。
 
もっとも、間接強制金は監護親の経済力に合わせて設定されるため、面会交流を拒否することにより、監護親は経済的な打撃を受けてしまいます。
例えば、監護親の年収の多い場合は、1回あたり数百万円支払えと命じられるケースもあります。
さすがにこれだけの間接強制金を課せられる場合は応じる人がほとんどだと思われます。
 
それでもなお、面会交流を拒否されている場合は、監護親と直接交渉するしかありません。
監護親と非監護親が直接話し合っても、話がまとまらないことがほとんどと思われますので、弁護士に依頼して弁護士に交渉してもらうべきでしょう。
 

10.面会交流の取り決めでは初めから弁護士のサポートを受けよう

離婚後に子どもとの面会交流の機会を確実に確保するためには、離婚時に面会交流の取り決めを行っておくことが大切です。
できれば、面会交流調停を申し立てて、調停調書を作成しておくことが望ましいでしょう。
調停調書が作成されていれば、監護親が面会交流を不当に拒否した場合に、直ちに面会交流の間接強制を申し立てることが可能になるためです。
 
そのためには、面会交流調停において、有利な流れをつかむことが大切です。
そのためのポイントは、
 

  • 調停委員に良い印象を与える。
  • 自分の意見を主張する際は根拠を用意する。
  • 説明は論理的に行う。

 
この3点です。
 
普段から自分の意見を主張することに慣れていない方は、弁護士にサポートしてもらった方がよいでしょう。
また、自分の意見を堂々と主張できる方でも、その内容が法的に妥当かどうかの観点も必要です。
例えば、「養育費を支払っているのだから面会交流の権利があるはずだ」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、養育費の支払いは面会交流の対価ではありません。
このような誤った認識で面会交流調停に挑んでしまうと、調停委員に良い印象を与えることはできません。
そのため、面会交流の取り決めでは初めから弁護士のサポートを受けるべきです。
 
面会交流に関してお悩みの方は、早めに弁護士にご相談ください。

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