不倫・浮気の慰謝料の相場はいくら?法的に認められる金額と請求の条件を解説
配偶者が不倫・浮気した場合に請求できる慰謝料の相場は、50万円〜300万円と金額の幅が広いです。
慰謝料請求をするための条件、額が高額になる事例について解説します。
不倫・浮気・不貞行為の慰謝料の相場はいくら?
増額される条件を解説します。
不貞行為があった場合の慰謝料の相場は総額で100万円〜300万円です。
また、不倫相手だけへの慰謝料請求の相場は、50万円〜150万円程度です。
夫婦や男女の許されざる関係については、不倫、浮気、不貞行為と様々な表現がありますが、そのうち慰謝料を請求できるのは、不貞行為と認定された場合に限られます。
この記事では、
- ・不貞行為とは何か?
- ・不貞行為を理由とする慰謝料請求をするための要件は?
- ・不貞行為の慰謝料が高額となるケースは?
- ・不貞行為の慰謝料の相場
- ・夫が路上で他の女性と手をつないで仲良く歩いている。
- ・夫が路上で他の女性とキスをしている。
- ・夫が他の女性と一緒にビジネスホテルに入る。
- ・夫が他の女性と一緒にラブホテルに入る。
- ・不貞行為が行われたこと
- ・不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していないこと
- ・故意、過失の要件
- ・不貞行為をした当事者の一方から慰謝料全額を受け取っていないこと
- ・離婚する場合は、100万円〜300万円程度
- ・婚姻関係を継続する場合は、100万円〜200万円程度
- ・離婚する場合は、50万円〜150万円程度
- ・婚姻関係を継続する場合は、50万円〜100万円程度
- ・配偶者が一方的に自宅を出て不倫相手と同棲を始めた。
- ・不倫相手が配偶者に対して、離婚や同棲を唆した。
- ・不倫発覚後も、配偶者が謝罪や反省もせずに、不倫関係を続けている場合。
について解説します。
実際の慰謝料の額はケースにより大きく異なりますから、弁護士に相談して判断するのが最善です。
1.不倫・浮気・不貞行為の違い
配偶者やパートナーが不倫、浮気、不貞行為のいずれの行為を行ったとしても、配偶者やパートナーは、裏切られたことにより精神的苦痛を受けます。
では、不倫、浮気、不貞行為とはそれぞれどのような行為を意味するのでしょうか。
まず、不倫は、道徳的に許されない男女の関係のことを意味し、一般的には、既婚者が配偶者以外の人と交際することを意味します。
夫が外で妻以外の女性と親しく付き合っている場合は、男女の関係がどの程度進んでいるかに関わらず、不倫と表現することがあります。
浮気も不倫とほぼ同じ意味で使われますが、不倫が既婚者が他の男女と交際する意味合いが強いのに対して、浮気は未婚のカップルの一方が他の男女と交際する意味合いが強いというニュアンスの違いがあります。
不倫、浮気はどちらも世俗的な用語で法律用語ではありません。
民法では、不貞行為についてのみ定められており、夫婦の一方に不貞行為があった場合は、離婚の訴えを提起できる旨が定められています。
つまり、不貞行為は法定離婚原因の一つになります。
では不貞行為とは何か? ですが、判例によると、不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」を指すと解されています(最判昭和48年11月15日 民集 第27巻10号1323頁)。
ポイントは、性的関係つまり、肉体関係がある場合が不貞行為に当たるということです。
例えば、夫が妻以外の女性とキスをしたとしても、性的行為を伴うものでなければ、法律上は、不貞行為とは言えないということです。
2.探偵に浮気調査を依頼した場合、確定的な証拠となるのは?
夫婦の一方が他方の配偶者に不倫・浮気・不貞行為の慰謝料請求を行う前提として証拠を押さえるために探偵に浮気調査を依頼することもあると思います。
例えば、夫の浮気を疑い、妻が探偵に浮気調査を依頼したとしましょう。
探偵は、夫を尾行して、次のような証拠を押さえたとします。
実は、これらの証拠のうち、不貞行為の直接の証拠はありません。
「夫が他の女性と一緒にラブホテルに入る。」シーンのみが、不貞行為を間接的に推認させる証拠になるにすぎません。
路上で手をつないで歩いたり、キスをすることは一般的な不倫、浮気の証拠と言えても、不貞行為とまでは言えません。
また、夫が他の女性と一緒にビジネスホテルに入っても、同じ部屋に泊まるとは限らないため、不貞行為を推認させる証拠としては弱いと言われています。
3.慰謝料請求とは
慰謝料請求とは、加害者の行為により被害者が精神的苦痛を被った場合に、被害者が加害者に対して、金銭的な補償を請求することです。
不倫・浮気・不貞行為のいずれがなされた場合でも、夫婦の一方やパートナーは精神的苦痛を被りますが、慰謝料請求が可能なのは、法的に保護に値する関係にあるかどうかや不倫・浮気・不貞行為の程度により異なります。
例えば、未婚の男女のカップルのうち、男性が浮気した場合、女性側は精神的苦痛を被るかもしれませんが、未婚の男女の関係は、法的に保護されるほどのものではありません。
そのため、一般的には慰謝料請求はできません。
一方、夫婦の一方の浮気の場合は、夫婦の関係が法的に保護すべきものである以上、慰謝料請求も可能になりますが、不貞行為に及んでいない場合は、慰謝料請求ができないこともあります。
4.不倫・浮気・不貞行為の慰謝料請求をするための4つの要件
不倫・浮気・不貞行為の慰謝料請求をするためには、次の4つの要件を満たすことが求められます。
それぞれ解説していきましょう。
4.1不貞行為が行われたこと
上記までに紹介したとおり、慰謝料請求ができるのは、原則として不貞行為があった、つまり、性的関係や肉体関係があったと認められる場合だけです。
夫婦の一方が不貞行為を行っていたかどうかは、探偵の浮気調査で押さえた証拠写真などにより証明しますが、証拠写真だけで確定的な証拠を掴めない場合は、不貞行為を推認できるメールやSNSのやりとり、ラブホテルを利用したことを示すクレジットカードの明細やカーナビの履歴といった間接的な証拠で補強する必要があります。
4.2不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していないこと
不貞行為を理由とする慰謝料請求が可能なのは、不貞行為によって夫婦の一方が精神的苦痛を被ると共に、これまで平穏だった夫婦の共同生活が侵害、破壊されてしまうためです。
そのため、不貞行為がなされた時点で、法的な婚姻関係は継続していても、別居していたり、家庭内別居状態にあるなど、すでに夫婦の関係が破綻していた場合は、不貞行為に対する慰謝料請求は認められないケースがほとんどです。
また、不貞行為の時点で離婚協議が始まっていたり、離婚調停が申し立てられていた場合も、離婚協議の交渉や離婚調停で不利になることはあっても、慰謝料請求自体は難しいとされています。
4.3故意・過失の要件
不貞行為を理由とする慰謝料請求は、民法上は709条の不法行為による損害賠償を求める形になるため、相手方に「故意又は過失」があったことが要件になります。
慰謝料請求をする相手が、自分の配偶者であれば、自由意思に基づいて不貞行為をすることは当然に故意又は過失があるわけですから特に意識する必要はありません。
一方、不倫相手に対して慰謝料請求する場合は、あなたの配偶者が既婚者であることを知っていたかどうかがポイントです。
知っていた場合は故意があると言えますし、知らなかったとしても普通の人の判断能力があれば既婚者と気づくはずだと言える場合は過失がありということになり、慰謝料請求が可能です。
慰謝料請求をされた不倫相手が、既婚者だとは知らなかったと主張して支払いを拒むことはよくあります。
そのため、既婚者だと気づいて当然だという状況を慰謝料請求する側で主張立証しなければならないこともあります。
4.4不貞行為をした当事者の一方から慰謝料全額を受け取っていないこと
不貞行為の慰謝料請求は、あなたの配偶者とその不倫相手のどちらに対しても請求することができます。
民法上、不貞行為は配偶者とその不倫相手の共同不法行為となり、その慰謝料支払い義務は、両者の連帯債務となるためです。
例えば、あなたの配偶者と不倫相手に請求すべき慰謝料の相場が200万円だったとしましょう。
あなたが配偶者に対して、200万円請求し全額の支払いを受けた場合は、不倫相手に対してはそれ以上の請求を行うことはできません。
一方、配偶者に請求していない場合は、不倫相手に対して200万円全額の支払いを求めることができます。
配偶者から100万円の支払いを受けている場合は、残額の100万円を不倫相手に請求する形になります。
5.不貞行為の慰謝料請求をしたのに求償権を行使されてしまう場合とは?
不倫相手に対して不貞行為の慰謝料請求をした場合、不倫相手から求償権を行使されてしまい、夫婦の共同財産から出費を強いられてしまうことがあります。
上記で解説したとおり、不貞行為の慰謝料支払い義務は、配偶者とその不倫相手の連帯債務になります。
慰謝料の相場が200万円だったとすると、請求する側としてはどちらに対しても200万円全額の支払いを求めることができます。
そのあとで、配偶者とその不倫相手の間で、200万円について責任に応じた負担割合の話し合いが行われます。
一般的には、責任の割合は5:5となりますから、不倫相手はあなたの配偶者に対して、100万円を求償できるわけです。
責任の割合が、あなたの配偶者の方が重いと認定されて、7:3となった場合なら、140万円も求償されてしまいます。
その求償された額をあなたの配偶者のポケットマネーから支払わせるのであれば、あなたや夫婦の共同財産には影響がないかもしれませんが、夫婦の共同財産から出費する場合は、慰謝料をもらっても、負担割合に応じて不倫相手に返さなければならないことになります。
こうした煩わしさを避けるためには、不倫相手に慰謝料請求する際に、不倫相手の責任の割合とその責任に応じた慰謝料請求であることを明確にし、求償権を放棄してもらうことが考えられます。
さらに、後のトラブルを避けるために慰謝料請求の際に不倫相手と明確な示談書等を交わしておくことが重要です。
6.不貞行為の慰謝料の相場
不貞行為の慰謝料の金額については、養育費、婚姻費用のような明確な算定基準はありません。
不貞行為をした配偶者やその相手方との直接交渉により慰謝料を請求する場合なら、相手方が支払う限り、いくら請求しても構いません。
一方、調停や裁判になった場合は、裁判例の傾向からして、おおよその相場に沿った慰謝料が認められます。
不貞行為の慰謝料の相場は、不貞行為がきっかけで夫婦が離婚することになったのか、婚姻関係を継続するのかにより異なります。
6.1離婚する場合の慰謝料の相場
不貞行為がきっかけで夫婦が離婚することになった場合は、不倫された側が被った精神的苦痛は多大なものになります。
そのため、不貞行為の慰謝料の相場も高額になりがちで、100万円〜300万円程度となります。
6.2不貞行為が発覚しても婚姻関係を継続する場合の慰謝料の相場
不貞行為が発覚しても、不貞行為をした側が真摯に反省して、夫婦関係をやり直すなどして、離婚せずに婚姻関係を継続する場合は、不倫された側の被る精神的苦痛もそれほど大きくないと考えられます。
そのため、不貞行為の慰謝料の相場も離婚する場合よりも低く、100万円〜200万円程度となります。
6.3不倫相手のみに慰謝料請求する場合の慰謝料の相場
不倫相手のみに慰謝料請求する場合も、夫婦が離婚することになったのか、婚姻関係を継続するのかにより、慰謝料の相場は異なります。
という相場になりますが、不貞行為の責任の割合に応じて請求することになります。
実務上は、配偶者と不倫相手の不貞行為の責任の割合は、5:5とするケースが多いです。
そのため、不倫相手への慰謝料請求額の相場は、
となります。
この場合、不倫相手には、求償権を放棄してもらうことになるため、その旨の示談書等を作成します。
7.不貞行為の慰謝料が増減されるケース
不貞行為の慰謝料は、婚姻関係や不倫の程度により、増額されたり減額されることがあります。
不貞行為の慰謝料が増減する条件について見ていきましょう。
7.1婚姻期間の長さ
夫婦の婚姻期間が長ければ、不貞行為に対する慰謝料は増額されます。
一方、婚姻期間が短い夫婦の場合は、慰謝料は減額されます。
目安としては、婚姻期間が3年以下であれば、婚姻期間が短いものと判断されます。
7.2不倫期間の長さや頻度
配偶者と不倫相手が不倫関係にあった期間が長ければ長いほど、慰謝料は増額されます。
また、配偶者の不倫が繰り返されており、過去の不倫が発覚した際に慰謝料を請求していない場合などは、その分もまとめて請求することもありますし、二度と不倫しないとの約束を破ったことへの違約金を上乗せすることもあるため、その分、配偶者への慰謝料請求の額が増額されます。
さらに、不倫関係の復縁のように、いったん不倫が発覚して別れたはずなのに、同じ不倫相手と不貞行為を繰り返しているような場合も、慰謝料が増額されます。
7.3夫婦の間に未成年の子供がいる場合
夫婦の間に未成年の子供、特に幼い子供がいるにもかかわらず、不貞行為に及んでいた場合は、慰謝料の額が増額されます。
不倫された配偶者が被る精神的苦痛がより大きくなると考えられるためです。
7.4不貞行為の結果、妊娠・出産した場合
配偶者と不倫相手の不貞行為の結果、妊娠・出産に至った場合も、不倫された配偶者が被る精神的苦痛がより大きくなるため、慰謝料の額が増額されます。
7.5不貞行為発覚後の被害配偶者の体調不調
不貞行為が発覚後に、不倫された側が心身に変調を来して、精神科や心療内科への受診が必要になった場合などは、精神的苦痛が多大だったことになるので、慰謝料の額が増額されます。
7.6積極的に不貞行為を行っていた場合
例えば、次のように積極的に不貞行為を行っていた場合は慰謝料の額が増額されます。
8.まとめ
不倫・浮気・不貞行為の慰謝料の相場について見てきました。
不貞行為の慰謝料の相場は総額で100万円〜300万円、不倫相手だけへの慰謝料請求の相場は50万円〜150万円程度です。
ただ、不貞行為の慰謝料の相場は、事例により大きく異なります。
どの程度の慰謝料の額ならば適正なのかは、裁判例を踏まえた専門的な判断が必要になります。
不倫相手や加害配偶者に慰謝料を請求する場合はもちろん、慰謝料を請求されてしまった場合も、弁護士にご相談ください。
弁護士にご相談いただければ、適切な慰謝料の額を判断することができるので、請求額が少なすぎて後悔したり、払いすぎてしまうこともありません。
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