養育費支払いの終期(成年年齢引下げとの関係2)
目次
1 はじめに
以前のコラムで、民法改正による成人年齢の引下げ及び改正法と養育費の関係についてお話ししました(詳しくはこちら)。
この内容を踏まえて、成人年齢の引下げによる養育費の終期に関する論点について考えます。
2 改正前に既に終期として「成人」に達する日までと合意していた場合の「成人」とは何歳か?
前回コラムの3にあるとおり、改正による成人年齢の引下げがあっても、20歳未満の者について、未成熟な面を踏まえて保護すべき必要があるという点に変わりはありません。
また、合意した当事者の意思解釈として、事後的に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたとしても、合意の前提となった子の監護状況や教育内容等が変わるわけではなく、改正による引下げによって養育費の終期を短縮することは、合意した当時の当事者の意思に合致しないと考えられます。
したがって、改正による成人年齢の引下げがあっても、既に「成人」と定められていた場合の「成人」とは、満20歳に達する日(の属する月)であると解されます。
3 改正前に既に終期として「20歳に達する日(の属する月)まで」と定められていた場合、成人年齢の引下げが終期の変更事由になるか?
この点についても、上記2と同様、事後的に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたとしても、合意の前提となった事情(監護状況、教育環境等)が変わるわけではなく、改正による引下げによって養育費の終期を短縮することは、合意当時の当事者の意思に合致しないと考えられます。
また、前回コラムの3にあるとおり、改正法は未成熟子の養育費をこれまでどおり保護することを前提としています。
したがって、改正による成人年齢の引下げがあっても、それ以前に「20歳に達する日(の属する月)まで」と定められていた場合、終期を20歳から18歳に短縮すべき変更事由にはならないと解されます。
その他のコラム
離婚の基本的な手続きと必要な書類について
離婚の基本的な形は協議離婚といい、夫婦で話し合って離婚届を提出することがこれに当たります。 ただ、調停離婚や裁判離婚の形で離婚した場合でも、離婚届の提出は必要ですし、離婚届の提出と同時に、または、前後して行うべき手続きに大きな違いはありません。 この記事では、離婚の基本的な手続きと必要な書類を確認します。 1.離婚届の入手方法 離婚の手続きというと離婚届を出すだけと考えている方も多いと思います。 では...
離婚後に親権を取り戻せるのか?親権者の変更が可能なケースについて解説します。
未成年者の子どもがいる場合は、離婚時に親権者を決めて離婚届にも反映させますが、離婚後に親権を取り戻すことも可能です。 ただ、親権の変更は家庭裁判所での調停又は審判が必要で、「親権者を変更すべき事情」がないと認められません。 親権者を変更できるケースやポイント、手続きの流れについて解説します。 離婚時の親権の決め方 2024年(令和6年)の時点では、離婚時の親権は、夫婦の一方に決めなければなりません。 ...
養育費支払いの終期(成年年齢引下げとの関係3)
1 はじめに 前回のコラムに引き続き、成人年齢の引下げによる養育費の終期に関する論点について考えます。 2 民法改正による成人年齢の引下げ後の養育費の支払義務の終期についてどのように考えるべきか? 以前のコラム にあるとおり、養育費支払いの終期は、「子どもが未成熟子から脱した時点」であり、原則として20歳に達した日(の属する月)までと考えられていました。その背景には、子が満20歳に達するまでは未成熟子...
婚姻費用・養育費算定表で子の年齢区分を2区分としているのはなぜ?
1 はじめに 家庭裁判所では、婚姻費用及び養育費を算定するに当たり、いわゆる算定表が利用されています。 算定表は、夫婦双方の収入状況、子の有無・数・年齢などを参考にして、簡易迅速に婚姻費用及び養育費を算定できるよう提案されたものです。なお、この算定表は、提案から15年以上経過した令和元年12月、家庭の収入や支出の実態等の変化に対応するため、改定されました(これを「改定標準算定方式・算定表」といいます。)。 &nb...
年末年始休業のお知らせ
誠に勝手ながら、当事務所は、令和2年12月27日(月)から令和3年1月4日(月)まで年末年始休業となります(土日祝日は営業時間外です)。 年内最終営業は12月25日(金)、年始の営業開始は令和3年1月5日(火)です。 期間中は大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜ります様、お願い申し上げます。 なお、メールでのお問い合わせは随時受け付け...