面会交流の第三者機関(支援機関)とは?離婚後の親子の交流、支援の内容、相談の方法を解説
面会交流の第三者機関は、離婚後の未成年の子どもと非監護親の交流を支援するための機関です。
面会交流の場に第三者である支援者が立ち会ったり、子どもの受け渡しの援助や連絡調整を行います。
面会交流の第三者機関の支援内容や利用すべきケースについて解説します。
面会交流の第三者機関(支援団体)とは?支援内容や利用すべきケースを解説
面会交流は、離婚後に未成年の子どもと一緒に暮らしていない親(非監護親)と子どもが交流するための機会のことで、離婚の際に取り決めを行い、その取り決めに従って行うのが一般的です。
ただ、離婚した後で監護親と非監護親が電話等でも連絡を取り合えない場合は、面会交流が難しくなります。
このような場合に間に入って、面会交流が円滑に実施されるように支援するのが面会交流の第三者機関(支援機関)です。
面会交流の第三者機関(支援機関)による支援の内容や相談方法、利用した方がよいケースについて解説します。
面会交流とは
面会交流は、親子交流とも言います。
離婚した夫婦に未成年の子がいる場合、子どもは、父と母のどちらか一方のみと暮らすのが一般的です。
離婚した後で、子どもと一緒に暮らす親を監護親、子どもと別居する親を非監護親と言います。
未成年の子どもが成長するためには、同居する監護親だけでなく、別居する非監護親の愛情も必要です。
例えば、誕生日やクリスマスに非監護親からも何らかのプレゼントをもらうと言う形です。
また、特別な日でなくても、定期的に非監護親と交流して、非監護親からの愛情を確かめることが重要と言われています。
面会交流は、そのための機会を設けるためのものです。
面会交流というと、別居する非監護親が子どもと会うための権利の側面が強調されがちですが、子どもが離れて暮らす父や母からも愛されていることを実感し、親子関係を維持するための「子どもの権利」でもあります。
親権の有無と面会交流の可否
面会交流は、子どもが別居する親からも愛情を受ける機会を設けるために実施されるものです。
離婚後の親権は、離婚の際に夫婦間で話し合い、共同親権と単独親権のどちらかを選択することになります。
単独親権となった場合は、子どもと別居する親は親権を持たないのが一般的です。
ただ、親権を持っていない親でも、子どもと面会交流を行うことができます。
親権を持っている親が面会交流を拒否している場合でも、夫婦間で話し合いを行いましょう。
当事者間だけで協議を成立させることが難しい場合は、調停や審判といった裁判所の手続を利用する方法もあります。
面会交流の第三者機関とは
面会交流は、監護親が子どもを非監護親に引き渡して、子どもと交流させ、約束の時間が過ぎたら、子どもを非監護親から監護親に引き渡す形で実施されます。
もちろん、面会交流の間、監護親が同行することも可能です。
ただ、面会交流の実施が監護親と非監護親にとって負担になることもあります。
例えば、次のような場合です。
- ・モラハラが原因で離婚したため、監護親と非監護親が電話等で連絡を取り合うことも顔を合わせることも苦痛。
- ・非監護親が約束を守らない人なので、面会交流後に子どもを返してくれるか不安。
- ・非監護親が子どもに暴力をふるったり、暴言を吐かないか不安。
- ・子どもは会いたがっているのに、監護親が頑として面会交流を拒否している。
- ・監護親と非監護親が連絡を取り合うのが大変。
面会交流の第三者機関は、このような理由により、当事者だけでの面会交流の実施が難しい場合に、両者の間に入って、面会交流が円滑に実施されるように支援しています。
面会交流の第三者機関は、「面会交流支援団体」、「親子交流支援団体」と表現されることもあります。
面会交流の第三者機関の一覧表は、法務省のサイトで紹介されていますので、参考にしてください。
参考:親子交流支援団体等(面会交流支援団体等)の一覧表について(法務省)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00286.html
面会交流の第三者機関は2種類に分けられる
面会交流の第三者機関(面会交流、親子交流の支援団体)は、大きく2種類に分類できます。
- ・自治体が運営する第三者機関(支援団体)
- ・民間が運営する第三者機関(支援団体)
それぞれ確認しましょう。
自治体が運営する第三者機関(支援団体)
主に地方自治体が中心となって運営されている面会交流の第三者機関(支援団体)です。
公的な機関なので、無料で利用できるのが特徴です。
東京都では、「東京都ひとり親家庭支援センターはあと(https://haat.or.jp/)」という機関がひとり親のサポートの一環として、親子交流支援を行っています。
離婚した後で、面会交流を約束したものの具体的にどのように面会交流を実施したらよいのか分からない場合や監護親と非監護親が直接会うのが難しい場合に、付き添い等の支援を行ってくれます。
費用は無料で、原則、月1回、1年間利用できます。
東京都ひとり親家庭支援センターはあとの面会交流の支援内容
支援の対象者は次の条件を満たす人です。
- ・子どもが中学生までであること。
- ・子どもが同居する親(監護親)が都内に住所を有していること。
- ・監護親と非監護親の双方の所得水準が児童扶養手当受給相当、又は一方が児童扶養手当受給相当で他の一方が児童育成手当受給相当であること。
また、子の連れ去り、配偶者暴力などの恐れがないことや過去に親子交流支援を利用していないことなども条件となっています。
支援費用は、公費負担で無料です。
ただ、交通費・施設利用料等の実費は自分たちで負担する必要があります。
交流は月1回まで、1回の時間は1時間程度、支援開始月から1年間(最大12回)支援を受けられます。
面会交流の支援内容は次の3パターンです。
- 付添型
- 面会交流の場に支援者が付きそう。
- 受渡し型
- 子どもの受け渡しの援助を行う。
- 連絡調整型
- 双方の親に連絡を取り、面会交流の日程や場所を調整する。
無料で利用できる公的な機関なので、支援内容は限定的です。
子どもが面会交流を望んでいるのに、面会交流の方法が分からないとか、きっかけがつかめない場合などに利用を検討するとよいでしょう。
利用に先立って、親子交流支援員による事前相談の場が設けられており、面会交流のルールの確認が行われます。
この事前相談は、あくまでも、双方が面会交流を望んでいるものの、面会交流の方法やきっかけがつかめない場合に支援するというもので、面会交流を実施するかどうかという話し合いの場ではないことに注意しましょう。
一方が、面会交流を拒否している状況の場合は、まず、当事者同士で話し合いが必要ですし、当事者だけで協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てて、取り決めを行う必要があります。
民間が運営する第三者機関(支援団体)
NPO法人、公益社団法人、一般社団法人などの民間が運営している面会交流の第三者機関(支援団体)です。
完全な営利法人ではありませんが、民間の機関を利用するには、それなりの費用がかかります。
ただ、自治体の運営する支援団体よりは、支援内容が充実しているため、費用は掛かっても、安心・安全な面会交流を望んでいる方は、民間の機関を利用するとよいでしょう。
代表的な支援団体としては、次の第三者機関が知られています。
- ・公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)(https://fpic-fpic.jp/)
- ・一般社団法人びじっと 離婚と子ども問題支援センター(https://npo-visit.net/)
- ・NPO法人ウィーズ(https://we-ed-s.com/)
公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)の面会交流の支援内容
民間が運営している面会交流の第三者機関(支援団体)の場合、それぞれの団体ごとに支援内容に特徴はありますが、それほど大きな差はありません。
ここでは、公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)の支援内容を確認しておきましょう。
FPICは、Family Problems Information Centerの略称で、家庭問題情報センターのことです。
離婚調停における親権者の決定などで大きな役割を果たす家庭裁判所調査官が中心となって結成された団体です。
離婚、いじめ、ひきこもり、老親をめぐるトラブル、養育費の問題など、様々な家庭問題についての相談に応じており、その一環として、面会交流支援を行っています。
FPICの面会交流支援の対象者は次の条件を満たす人です
- ・子どもが小学校6年生までであること。
- ・FPICで事前相談を受けること。
- ・面会交流について当事者間で合意を成立させていること。(当事者間の合意書・調停調書・和解調書・審判書・判決書など)
- ・面会交流の合意事項の内容にFPICの求める必須合意事項を盛り込んでいること。
面会交流の支援内容は次の4パターンです。
- 付添型
- 面会交流の場に支援者が付きそう。1回の支援当たり3時間が限度。また、子どもが小学3年生まで。
- 受渡し型
- 子どもの受け渡しの援助を行う。
- 連絡調整型
- 双方の親に連絡を取り、面会交流の日程や場所を調整する。
- 短期支援型
- 1〜2回程度付添い型で面会交流を実施し、以後は、当事者だけで面会交流ができるようにすることを目指すものです。いわば、面会交流の予行演習的な支援内容です。
FPICによる支援期間も原則1年間とされています。
1年単位で更新できますが、支援開始後3年目には、自分たちだけで面会交流ができる状況を目指しています。
面会交流の第三者機関の支援内容はどれを選べばよいのか?
面会交流の第三者機関の支援内容は、
- ・付き添い型
- ・受け渡し型
- ・連絡調整型
- ・短期支援型
の4パターンが用意されているケースが多いです。
では、この4パターンのうち、どの支援内容を選択したらよいのでしょうか?
付き添い型を利用すべきケース
付き添い型は面会交流の場に第三者機関の支援員が立ち会うタイプの支援内容です。
支援員が付き添える時間は限定されており、3時間程度が限度です。
付き添い型を利用すべきケースは次の場合です。
- ・子どもが幼い場合(小学3年生程度まで)
- ・面会交流の際に非監護親が子どもに暴力をふるったり、暴言を吐く可能性があると危惧している場合。
- ・面会交流の際に非監護親が子どもに現在の生活状況について根掘り葉掘り聞き出すかもしれない場合。
- ・面会交流の際に非監護親が子どもに監護親の悪口や批判を植え付けようとする可能性がある場合。
- ・非監護親が面会交流の様々な約束やルールを破る可能性がある場合。
受け渡し型を利用すべきケース
受け渡し型は、第三者機関の支援員が子どもの受け渡しを代行するタイプの支援です。
連絡調整を行うこともあります。
ただ、面会交流の場面では支援員の立ち合いはありません。
受け渡し型を利用すべきケースは次の場合です。
- ・子どもと非監護親の面会交流自体には不安がない場合。
- ・子どもが小さく、自分で待ち合わせ場所に行けるか不安がある場合。
- ・監護親と非監護親が顔を合わせたり、連絡を取り合いたくない場合。
- ・監護親と非監護親のどちらかが相手からDVやモラハラを受けていた場合。
- ・面会交流の約束の時間を守らない恐れがある場合。
連絡調整型を利用すべきケース
連絡調整型は、第三者機関の支援員が面会交流の日時や場所を父母や子どもに代わって、調整してくれる形の支援です。
実際の面会交流の日に受け渡しの支援を行うわけではありません。
連絡調整型を利用すべきケースは次の場合です。
- ・子どもと非監護親の面会交流自体には不安がない場合。
- ・子どもがある程度大きくなっており、自分で待ち合わせ場所に行けるし、家まで帰れる場合。
- ・監護親と非監護親が電話等で連絡を取り合いたくない、又は、連絡を取り合えない場合。
短期支援型を利用すべきケース
短期支援型は、第三者機関の支援員が面会交流の場に1〜2回程度、付き添った上で、面会交流の予行演習を行うというタイプの支援内容です。
子どもとの面会交流自体は行いたいものの、非監護親が子どもとどのように過ごしたらよいのか、あるいはどのような話をしたらよいのか分からないような場合に、支援員がサポートすることが想定されています。
面会交流の第三者機関を利用する流れ
面会交流の第三者機関を利用するための流れは次のとおりです。
- ・面会交流の第三者機関を探す
- ・面会交流について父母の間で合意を成立させる
- ・第三者機関に支援の申し込みを行い契約する
一つずつ確認していきましょう。
面会交流の第三者機関を探す
面会交流を行う意思がある場合は、面会交流の第三者機関を探します。
面会交流の合意を交わしてから、第三者機関を探すこともできますが、FPICのように面会交流の合意内容に盛り込むべき項目が決められていることもあるため、合意を成立させる前に一度、第三者機関で事前相談を受けることが望ましいです。
その際に、面会交流の意義やルールなどについて詳細な話を聞いておくとよいでしょう。
面会交流について父母の間で合意を成立させる
面会交流の第三者機関では、事前相談の場を設けているのが一般的ですが、あくまでも、監護親、非監護親、それに子どもが面会交流に前向きであることが前提です。
面会交流を行うべきかどうかについて協議がまとまっていない場合は、当事者で面会交流の合意を成立させる必要があります。
当事者間の話し合いだけで協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てます。
なお、面会交流調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判を下す形になります。
第三者機関に支援の申し込みを行い契約する
面会交流の合意が成立したら、面会交流の第三者機関に申し込みを行い、契約を締結します。
支援内容は、上記までに解説したとおり、4パターンが用意されていますから、状況に応じて、最適な支援プランを選びましょう。
なお、民間が運営する第三者機関(支援団体)の場合は、それなりの費用が掛かります。
その費用は、父母のどちらが負担するのかの取り決めも行います。
まとめ
面会交流の第三者機関は、子どもの権利である面会交流が円滑に行われるように、様々な支援を行ってくれる団体です。
子どもに面会交流させるべきだと思っていても、非監護親と子どもだけでの面会交流に不安を感じている場合や、監護親と非監護親が連絡を取り合いたくない状況にある場合に、第三者機関の利用を検討するとよいです。
なお、面会交流の合意が成立していない状態では、第三者機関を利用することはできません。
面会交流の合意が難しい場合は、弁護士に依頼して交渉したり、家庭裁判所の調停手続の利用も検討してください。
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