離婚届の様式見直し -養育費に関する取決めの公正証書化の確認へ-
1 様式見直しの概要
令和3年4月16日、法務大臣は、離婚届の様式を近く見直し、子どもの養育費に関する取決めを公正証書にしたかどうかを確認するチェック欄を追加することを明らかにしました。
これまでの離婚届にも、面会交流及び養育費に関する取決めの有無についてのチェック欄は設けられていました。すなわち、「養育費の分担について取決めをしている」か、「まだ決めていない」のどちらかにチェックをつけるというものでした。
法務省の発表によれば、今回の見直しによって、「養育費の分担について取決めをしている」にチェックをつけた場合、さらに、取決めの方法として、「公正証書」か「それ以外」にチェックをつける内容が追加される予定とのことです。
夫婦間に未成熟の子どもがいる場合、双方の収入状況に応じて養育費を負担する義務があります。ところが、法務省の調査によれば、協議離婚の場合、夫婦間で養育費に関する取決めをしなかった割合は2割以上に上るとのことです(面会交流の取決めをしなかった割合は3割弱)。
こうした実態を踏まえ、離婚届に公正証書化の有無についてのチェック欄を設けることにより、養育費に対する意識の高まり、より確実な支払いに向くことを狙いとするようです。
なお、新様式の離婚届にはQRコードも記載し、スマートフォンで読み取ると、離婚後の養育費の支払いや面会交流に関するサイトにつながるとのことです。
2 感想
子どもの成長にとって、養育費が滞りなく支払われることが重要であることは明らかであり、今回の様式見直しによって、養育費に対する意識が高まることに越したことはありません。
ただ、離婚届は氏名の記入や押印など、必要事項の記入がされていれば受理されるものであり、養育費について「まだ決めていない」の欄にチェックをつけても受理されるため、今回の見直しによって明らかな効果が出るのかどうか疑問もあります。
協議離婚で養育費に関する取決めをしない事情は様々あると思いますが、「相手方が払ってくれるか分からない」、「離婚後に相手方とかかわりたくない」、「養育費の金額で揉めたくない」などといったケースが比較的多いのではないかと思います。
養育費については、家庭裁判所が公表している算定表によって簡易・迅速に金額を算定できる前提があります(紛糾するケースもありますが)。また、当事者間で養育費に関する取決めをすることが困難な事情がある場合には、ご本人に代わって弁護士が取決めに関する協議をするという選択肢もあります。
ですので、簡単に諦めないことが大切です。
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