離婚訴訟で訴えられた! → 慰謝料・財産分与等で訴え返す方法(反訴・予備的反訴)②
1 はじめに
前回のコラムでは、離婚訴訟における反訴、予備的反訴について解説しました(詳細はこちら)。
今回はその続きです。
2 控訴審での反訴と相手方の同意の要否
通常民事訴訟の控訴審で反訴を提起するためには、相手方の同意がなければなりません(民事訴訟法300条)。なぜならば、反訴については第一審で審理をしていないため、同意なしでの反訴を認めると、相手方の第一審で審理を受ける利益を奪うことになるからです。
これに対し、離婚訴訟をはじめとする人事訴訟では、控訴審の口頭弁論終結時まで、相手方の同意なく反訴を提起することができるとされています(人事訴訟法18条1項、最高裁平成16年6月3日第一小法廷判決)。これは、離婚判決が確定した後、反訴によって主張できた事実に基づいて改めて離婚訴訟することができないとされていることから(人事訴訟法25条2項)、判決確定前の段階では当事者に主張・立証する機会を十分に与えるという理由があると考えられます。
3 予備的反訴をすることによって逆に離婚(婚姻関係の破綻)を認容する方向に働かないか?
前回のコラムで述べたとおり、予備的反訴は、離婚自体を争いつつ、仮に離婚請求が認容されることを条件として、財産分与や慰謝料の支払いを請求するものです。
ただ、一方で離婚を争いながら、他方で離婚を前提とした財産分与や慰謝料を求めることが、逆に婚姻関係の破綻を推認されることにならないかという問題があります。
この点については確立した見解が存在するわけではありませんが、少なくとも、予備的請求として慰謝料請求を掲げる場合、その根拠となる事実関係を主張するわけですが、その事実関係を踏まえて、裁判所が「婚姻関係は破綻している」と判断する一要素にする可能性はあります。
ですので、離婚自体を強く争う(絶対に認めない)という意向であれば、予備的反訴はせずに、本訴の中で原告の離婚請求を真っ向から争うという方針がよいのではないかと考えます。
その他のコラム
熟年離婚で将来の年金はどうなる?┃年金分割の制度・手続きと注意点を分かりやすく解説
はじめに 「熟年離婚を考えているが老後の年金はどうなるのだろう」と不安な方も多いでしょう。熟年離婚時の年金分割について、分割方法や注意点を把握することは大切です。 特に専業主婦(主夫)の場合、長い結婚生活後の年金が重要な生活資金となるため、しっかりと制度を理解しておくことが求められます。 本記事では年金分割に関する基本的な制度や手続きを分かりやすく解説し、熟年離婚を検討する方々が役立てられる情報を紹介します。 ...
離婚時に財産分与の対象になる株・株式とは? 方法や手続きも解説
離婚の際に夫婦が株等の資産を有しており、共有財産に該当する場合はその株式も財産分与しなければなりません。株を財産分与する方法や手続きは、その株式の会社が上場しているか、夫婦が経営者なのかによっても異なります。株を財産分与するための手続きや注意点について解説します。 離婚で財産分与すべき株とは? 株価の評価方法、手続きの流れを解説 離婚の際に共有財産に該当する株を夫婦のどちらかが有しているケースでは、どちらか...
養育費不払いに対する対応(履行勧告、履行命令)
1 はじめに 前回のコラム(養育費支払いの現状と取り決め方法)はこちらです。 公正証書や調停調書で約束された養育費の支払いが約束どおりに履行されない場合、養育費の支払いを求める側は、家庭裁判所に対し、履行勧告や履行命令を申し立てる方法があります。 2 履行勧告 履行勧告とは、養育費の支払いを求める人(権利者といいます。)の申出によって、家庭裁判所が養育費の履行状況を調査し、養...
単身赴任は離婚の原因になりやすい? 理由や方法、弁護士に相談すべきケースも解説
単身赴任すると離婚のきっかけになりやすいです。夫婦の間に距離ができるだけでなく、心も離れやすく、法定離婚原因である浮気、不倫、不貞行為が起きやすいからです。単身赴任の期間は別居としてカウントされませんが、 協議離婚や離婚調停により夫婦が同意すれば離婚することも可能です。 離婚のきっかけになりやすい単身赴任 原因や浮気の確認方法も解説 単身赴任は離婚の原因とはなりません。しかし、単身赴任がきっかけで夫婦の間に...
養育費不払いに対する対応(養育費支払いの現状と取り決め方法)
1 養育費支払いの現状 離婚する夫婦に未成熟の子どもがいる場合、子どもの生活費として支払われるものが養育費です。子供を育てていくために多くのお金がいることは明らかであり、養育費は子どもが自立して生活できるようになるまでの大事なお金の問題ということになります。 ところが、厚生労働省の平成28年度全国ひとり親世帯等調査によると、現在養育費を受けている母子家庭は約24%、父子家庭は約3%にとどまっています...
