別居で離婚が成立するのに必要な期間は何年?弁護士が解説!
目次
離婚をすすめるうえで、別居期間がどのように影響するのかはケースバイケースです。過去の判例では、3年以内の短期間の例もあれば、10年以上の長期間のケースもあります。離婚が成立するための別居期間の考え方について解説します。
離婚の相談で多いのが「何年別居すれば離婚できますか?」といったものです。
法律上、離婚成立の別居期間について明確な定めがあるわけではありません。
離婚は夫婦の合意があればいつでもできますが、一方が拒否をすると最終的には裁判所の判断に委ねるしかありません。
その際、別居期間は婚姻契約の継続が難しいかどうか裁判所が判断するのに大きく影響します。
そこで本記事では、離婚が成立するにあたって必要な別居期間について解説していきます。
離婚の種類
まずは離婚の種類についておさえましょう。
別居が離婚の成立に必要かどうかは、どのような離婚のパターンになるかによって変わるからです。
離婚のパターンは下記の表の4つです。
離婚の種類 | 概要 |
---|---|
協議離婚 | 夫婦が話し合いで合意し、役所に離婚届を提出することで成立します。 もっとも一般的な離婚の方法です。 |
調停離婚 | 家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを行い、合意に至れば離婚が成立します。 協議離婚が難しい場合に利用されることが多いです。 |
判決離婚 | 合意に至らない場合、裁判で離婚を求めることになります。 裁判所が離婚理由の正当性を判断し、判決によって離婚の可否が決まります。 |
和解離婚 | 裁判の途中で当事者が合意し、和解によって離婚が成立するケースです。 判決を待たずに解決できます。 |
別居期間が重要になってくるのは「判決離婚」のパターンのみです。逆にいえば、合意さえあれば別居期間に関係なくいつでも離婚できます。
ただし判決離婚をするには裁判所が離婚を認めるための法的な要件が必要です。
「判決離婚」の法廷離婚事由
裁判で離婚を求める場合、民法770条1項各号に定められた法定離婚事由のいずれかを満たす必要があります。
- 1. 配偶者に不貞な行為があったとき
- 2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 3. 配偶者が3年以上生死不明であるとき
- 4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- 5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
別居については「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、他にはDV(家庭内暴力)やモラハラ、浪費癖、性的関係の拒否などが考えられます。
離婚成立の別居期間目安は3年~5年
離婚が成立すると認められるのに「必ず○年の別居が必要」という明確な基準は存在しませんが、一般的には3年から5年が目安です。
日本の法律では、夫婦には同居義務があるため、長期間別居が続けば、実質的に婚姻関係が失われているとみなされやすくなります。
相手が離婚に応じない場合でも、長期間の別居が「夫婦関係の破綻」の証拠となり、裁判で離婚できる可能性が高まります。
平成8年の法改正案では、5年以上の別居が離婚理由の一つとして提案されました。しかし現在の裁判実務では、それより短い期間でも離婚が成立する例も少なくありません。
ただし、裁判所は単なる別居期間だけでなく、別居の経緯や夫婦関係の実態も考慮します。たとえば、3年未満でもDVや不貞行為があれば早期に離婚できることもあれば、10年別居していても離婚できないケースもあります。
たとえば、次のようなケースが考えられるでしょう。
- ・相手が有責配偶者の場合
- ・自分が有責配偶者の場合
- ・婚姻期間が長い
- ・未成熟子がいる
それぞれについて解説します。
ケース①相手が有責配偶者の場合
まず有責者とは、婚姻関係破綻の原因をつくった側のことを指します。
もっともわかりやすい例は、不倫が離婚原因となっている場合の不倫した側です。
不貞行為やDVを行った配偶者に対して離婚を求める場合、目安とされる3〜5年の別居期間を満たしていなくても、離婚を認めてもらえる可能性があります。
離婚訴訟では法律上の離婚原因が必要で、その代表例が不倫やDVです。
裁判で相手の有責行為を明確に証明したら、その時点で離婚が成立するケースもあります。
有責配偶者が話し合いや調停を拒否する場合、訴訟を選択するのも一つの手段でしょう。
ただし、有責行為の証拠が不可欠なので、弁護士に相談して検討することが重要です。
ケース②自分が有責配偶者の場合
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
ただし、一定の条件を満たす場合には例外的に認められるケースもあります。
具体的には、
- ・長期間の別居が続いていること
- ・夫婦の間に未成年の子どもがいないこと
- ・離婚によって相手が過酷な状況に陥らないこと
これらの3つが重要です。
別居期間は一般的な3〜5年では不十分なことが多く、10年以上に及ぶケースもあります。裁判では、婚姻関係が完全に破綻しているかどうかが問われるため、夫婦間の交流が一切なく、経済的な関係も断たれていることが有利な判断材料となるでしょう。
ただし、有責配偶者からの請求が認められるのは例外的であり、裁判でも慎重に判断されます。
ケース③婚姻期間が長い
婚姻期間が長い夫婦ほど、裁判で離婚が妥当と判断されるまでに時間がかかるといわれています。
長年にわたり夫婦関係を続けてきた場合、一時的な不和や性格の不一致だけでは「婚姻関係の破綻」と判断されにくいからです。
とくに20年以上婚姻期間があると、経済的・精神的な結びつきが深いとみなされやすいです。
このケースで別居3年未満の場合、「一時的な別居」と判断されることもあり、離婚は認められにくいでしょう。
ケース④未成熟子がいる
未成熟子がいる場合も離婚までに時間がかかります。
裁判所は、子どもの福祉を最優先に考えるため、別居期間が3年以上であっても直ちに離婚が成立するとは限りません。
夫婦関係の破綻が明白であることに加え、子どもの生活環境が安定しているかが重要な判断材料です。
親権や養育費の問題が未解決の場合、裁判が長期化します。
相手が親権を主張している場合、別居期間の長さだけでなく、監護の実績や子どもの意思が重視されます。未成熟子がいる状況では、離婚後の生活設計が明確でなければ、裁判所は慎重な判断を下すでしょう。
実際は別居から1年未満で離婚するケースが多い
離婚に必要な別居期間の目安は3年〜5年と解説しましたが、実際には別居から1年未満で離婚するケースがもっとも多いです。
とくに協議離婚の場合、夫婦双方が合意すれば別居期間に関係なく速やかに離婚が成立します。
調停離婚や裁判離婚においても、不貞行為やDV、モラハラなど明確な離婚理由がある場合は、上述の通り別居期間が短くても離婚を認めてもらえる可能性が高くなります。
別居後すぐに離婚調停を申し立てることで、1年以内に離婚が成立することも少なくありません。
別居期間に関する注意点
別居期間に関して気をつけておくべきことは下記の5つです。
- ・無断で別居をしてはいけない
- ・恋愛関係
- ・生活費の請求
- ・単身赴任は別居でない
- ・家庭内別居よりは完全別居
それぞれ解説します。
無断で別居をしてはいけない
配偶者に無断で別居をすると、「悪意の遺棄」と判断され、離婚原因をつくった有責配偶者と認定されることがあります。
別居を考える場合は、事前に話し合いを行い、合意を得ることが大切です。話し合いが難しい場合でも、書面やメールなどで記録を残しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
ただし、配偶者からDVを受けているケースでは、身を守るために同意なく別居することが必要です。安全の確保を最優先とし、警察や弁護士などに相談することが望ましいです。
恋愛関係
別居中であっても、配偶者以外の異性と性的関係をもつと不貞行為とみなされます。
法律上の婚姻関係が継続しているため、離婚成立前に恋愛関係をもつことは慎重に考えなければなりません。
不貞行為が明らかになると、有責配偶者と判断され、自ら離婚を請求できなくなるかもしれません。
慰謝料を請求されることもあり、離婚手続きが不利な状況になることも考えられます。
別居期間が長くなると、新たな恋愛を考える人もいますが、法的なリスクを理解しておくことが大切です。裁判で不貞行為が証明されると、離婚の条件交渉にも影響が出るため、安易な行動は避けるべきです。
生活費の請求
別居中でも夫婦には扶助義務があるため、婚姻費用という生活費を請求できます。
収入の多い配偶者が経済的に支える義務を負うので、離婚成立するまでの間、生活費を受け取る権利があります。
支払い額は双方の収入や生活状況をもとに決まるため、具体的な金額を知りたい場合、裁判所が示す婚姻費用算定表の確認をするとよいでしょう。
単身赴任は別居でない
単身赴任による生活の分離は、別居期間とは見なされません。
仕事の都合で離れて暮らすだけでは、婚姻関係の破綻とはみなされないためです。
ただし、単身赴任中に夫婦関係が悪化し、一方が離婚を強く望むようになった場合は、別居として扱われるケースもあります。
たとえば、単身赴任を機に夫婦の連絡が途絶えた場合や、配偶者が赴任先への同行を拒否し、実質的な別居状態が続いた場合などです。
家庭内別居よりは完全別居
同じ家に住みながら生活を分ける家庭内別居より、住居を完全に分けた別居のほうが、離婚が成立する可能性は高いです。
裁判で婚姻関係の破綻を主張する場合、物理的にも精神的にも完全に分かれていることが重要視されるためです。
ただ、家庭内別居の状況がまったく考慮されないわけではありません。たとえば、食事や寝室を完全に分け、家計も別に管理しているような場合、夫婦関係が実質的に破綻している証拠の一つとして扱われることもあります。
別居期間を理由に離婚請求する準備
では、実際に別居期間を理由にして離婚請求の準備をすすめていくための手順について解説します。
主なステップは次の4つです。
- 1. 弁護士に相談する
- 2. 婚姻を継続し難い事由を集める
- 3. 相手の財産等を調べる
- 4. 離婚条件を整理しておく
順に解説します。
ステップ①弁護士に相談する
別居期間を理由に離婚請求する場合、婚姻関係の破綻が認められるかどうかが重要です。
裁判で有利な証拠をそろえるには、法律の専門知識が必要です。
弁護士に相談すれば、別居期間の長さがどのように判断されるかや、必要な証拠の収集方法についてアドバイスを受けられます。
ステップ②婚姻を継続し難い重大な事由を集める
別居期間の長さだけでなく、夫婦関係が継続困難であることを証明できる資料の収集も大切です。
たとえば、過去の暴力や精神的虐待、生活費の未払いなどがあれば、それらの証拠を整理しておくことが求められます。
メールやLINEのやり取り、診断書、家計の記録など客観的に証明できるものを準備できることで、裁判では立証しやすくなります。
ステップ③相手の財産等を調べる
別居中でも配偶者の財産について知る権利があり、預貯金や不動産、保険、年金などの情報を整理しておくのがおすすめです。
財産が隠されている可能性もあるため、給与明細や通帳のコピーなどを確認し、証拠を確保することが有効でしょう。
弁護士に依頼すると、調査のサポートを受けられ、財産分与の交渉を有利にすすめられます。
ステップ④離婚条件を整理しておく
どのような条件で離婚したいのかを明確にしておくことが大切です。
親権や養育費、財産分与、慰謝料など、具体的な条件を整理しておきましょう。
希望条件を決める際には、将来の生活を考慮し無理のない範囲で現実的な内容にすることが重要です。
【まとめ】離婚成立の別居期間が気になる方は弁護士に相談を
離婚をすすめるうえで、別居期間がどのように影響するのかはケースによって異なること等について解説してきました。
単純に「3年別居すれば離婚できる」とはいえず、過去の判例では短期間で離婚が認められた例もあれば、10年以上別居していても成立しなかったケースもあります。
そのため、自分の状況ではどのようにすすめるのが最善なのかを見極めることが重要です。
専門的な判断が必要になるため、離婚を検討している方は、まずは弁護士に相談することがもっとも確実です。
適切なアドバイスを受けることで、不利な状況を避け、有利にすすめるための準備ができますよ。
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