養育費支払いの終期(成年年齢引下げとの関係3)
1 はじめに
前回のコラムに引き続き、成人年齢の引下げによる養育費の終期に関する論点について考えます。
2 民法改正による成人年齢の引下げ後の養育費の支払義務の終期についてどのように考えるべきか?
以前のコラム にあるとおり、養育費支払いの終期は、「子どもが未成熟子から脱した時点」であり、原則として20歳に達した日(の属する月)までと考えられていました。その背景には、子が満20歳に達するまでは未成熟子であること、すなわち、一般的・社会的にみて、経済的に自立することを期待されていないことがあります。
そして、このような実態について、改正法成立の前後で何か違いが生じるとも考えがたいです。
以前のコラム にあるとおり、改正による成人年齢の引下げ後も、現状どおり未成熟子を保護することが前提となっています。また、20歳未満の者については、未成熟な面を踏まえ保護の対象とすべきという考え方が維持されています。
そうすると、改正の前と後で未成熟子を脱する時期について異なる判断をする必要はなく、改正後も、これまでとおり、養育費支払いの原則的な終期は、満20歳に達する日(の属する月)であると解されます。
一方、子が大学進学を希望しており、その能力もあると認められるなど、大学進学の可能性が高い場合において、両親の学歴や経済状況を踏まえ、大学を卒業するまで経済的に自立しないことが許容されていると認められる場合、満22歳に達した後の最初の3月を終期とすべきであると解されます。
3 婚姻費用についての影響
婚姻費用については、婚姻費用の対象である子が満18歳となった時に、成人年齢に達したとして婚姻費用の変更(減額)事由になるかという問題があります。
これについては、養育費と考え方は同じで、改正によっても未成熟子を保護すべき要請に変わりはありません。事後的な改正によって婚姻費用の終期を短縮することは、合意当時の当事者の意思に合致しないと考えられます。
したがって、民法改正による成人年齢の引下げは、婚姻費用の変更(事由)には当たらないと解されます。
その他のコラム
家族間問題を扱う家事調停に「ウェブ調停」導入へ
1 概要 最高裁判所は、離婚調停や遺産分割調停などの家族間の紛争を扱う家事調停に、インターネット上で手続を進める「ウェブ会議」を導入する方針を固めました。 裁判のIT化の一環で、令和3年のうちに、東京、大阪、名古屋、福岡の4つの家庭裁判所で試行を開始し、その後、他地域の家庭裁判所への拡大も検討するようです。 2 これまでの家事調停 これまでの家事調停は、基本的に、申立てをした...
夏季休業のお知らせ
誠に勝手ながら、当事務所は、令和4年8月10日(水)から8月16日(火)まで夏季休業となります。 期間中は大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜ります様、お願い申し上げます。 なお、メールによるお問い合わせは随時承っております。詳しくはお問い合わせのページをご確認ください。 ...
離婚後に調停を申し立てることができるのか?離婚後の紛争調整調停やその他の手続を解説
離婚に際しては、財産分与を始めとして様々な事項を決める必要がありますが、協議離婚の場合、よく話し合いを行わないまま、離婚届を提出し、後悔する方もいらっしゃいます。 離婚後、協議を行い、まとまらない場合は、調停手続を利用することができるのでしょうか? 離婚後の紛争調整調停を始めとする調停手続について解説します。 何も決めないで離婚できるのか? 離婚の大半は「協議離婚」といい、当事者の話し合いだけで離婚届を...
面会交流の第三者機関(支援機関)とは?離婚後の親子の交流、支援の内容、相談の方法を解説
面会交流の第三者機関は、離婚後の未成年の子どもと非監護親の交流を支援するための機関です。 面会交流の場に第三者である支援者が立ち会ったり、子どもの受け渡しの援助や連絡調整を行います。 面会交流の第三者機関の支援内容や利用すべきケースについて解説します。 面会交流の第三者機関(支援団体)とは?支援内容や利用すべきケースを解説 面会交流は、離婚後に未成年の子どもと一緒に暮らしていない親(非監護親)と子どもが...
面会交流の間接強制が認められるケースとは?
離婚後の子どもとの面会交流に監護親が応じない場合は、間接強制によって実現することもできます。 弁護士に相談し面会交流調停を申し立てて、4つの要件を満たした調停調書や審判書を作成することがポイントです。 面会交流の強制執行(間接強制)が認められるケースについて解説します 離婚後の子どもとの面会交流を非監護親が求めても、監護親が拒否する場合に、強制執行により、面会交流を実現できるのでしょうか? 結論から言う...