財産分与で控訴するかは慎重に(財産分与における不利益変更禁止の原則の不適用) |大田区の離婚・慰謝料請求に強い弁護士

京浜蒲田法律事務所
初回相談無料

[まずはお気軽にご電話ください]

 03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

メールでの相談予約随時受付

財産分与で控訴するかは慎重に(財産分与における不利益変更禁止の原則の不適用)

1 不利益変更禁止の原則とは?

民事訴訟法304条は、第二審(控訴審)における判決について、「第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、することができる」と規定しています。

 

民事訴訟では、当事者が申し立てていない事項について判断をすることはできないとされています(民事訴訟法246条。これを処分権主義といいます。)。

この原則に基づき、第二審(控訴審)において審理・判断の対象となるのは、控訴人が不服を申し立てた範囲に限られます。

控訴人は、自己にとって有利な結論が得られるように不服申立て(控訴)をするわけですから、裏を返せば、裁判所は控訴人の不服申立てに反して、控訴人にとって不利な判決をすることはできないということになります。これが「不利益変更禁止の原則」です。

 

2 財産分与に関して不利益変更禁止の原則が問題となる場合

例えば、第一審で夫(被告)から妻(原告)に対して100万円の財産分与を命じる判決が出たところ、妻は控訴せず、夫だけが控訴した場合において、第二審で新たになされた主張や証拠の提出の結果、夫から妻に対して300万円の財産分与を命じることができるか(控訴していない妻がそのような判決を求めることができるか)といった状況が考えられます。

 

仮に、第二審で300万円の財産分与が命じられた場合、夫(控訴人)としては、自分だけが控訴をしたにもかかわらず、第一審よりも不利な判決を受けるということになり、それが不利益変更禁止の原則に反しないかということが問題となります。

 

3 最高裁判所の考え

この問題については、最高裁判所の考えが示されています(最高裁平成2年7月20日第二小法廷判決)。

 

最高裁は、第一審で被告に財産分与を命じた判決に対して被告が控訴したところ、控訴審判決が原告(被控訴人)からの控訴がないにもかかわらず第一審よりも多額の財産分与を認めた事案において、「離婚の訴えにおいてする財産分与の申立については、裁判所は申立人の主張に拘束されることなく自らその正当と認めるところに従って分与の有無、その額及び方法を定めるべきものであって、裁判所が申立人の主張を超えて有利に分与の額等を認定しても民訴法246条の規定に違反するものではない。」と判断しました。

つまり、財産分与については不利益変更禁止の原則の適用がないことを明らかにしました。

 

4 まとめ

このように、人事訴訟における財産分与については、民事訴訟の基本原則である不利益変更禁止の原則の適用がないということになります。

 

そのため、財産分与の点で自分だけが控訴する場合であっても、「第一審よりも不利な判決が出ることはない」という保証があるわけではなく、控訴審での審理内容によっては、第一審よりも不利な判断となる可能性もあります。その分、財産分与に関して控訴提起をするかどうかは慎重な検討が必要と言えるでしょう。

 

 

 

 

その他のコラム

養育費支払いの終期(成年年齢引下げとの関係3)

1 はじめに 前回のコラムに引き続き、成人年齢の引下げによる養育費の終期に関する論点について考えます。   2 民法改正による成人年齢の引下げ後の養育費の支払義務の終期についてどのように考えるべきか? 以前のコラム にあるとおり、養育費支払いの終期は、「子どもが未成熟子から脱した時点」であり、原則として20歳に達した日(の属する月)までと考えられていました。その背景には、子が満20歳に達するまでは未成熟子...

DV等被害者への支援措置(住民票等の閲覧制限)1

1 はじめに 離婚を考えている方の中には、相手方配偶者によるドメスティックバイオレンス(DV)に悩まれている方もいらっしゃると思います。また、元配偶者によるストーカー行為に悩まれている方もいらっしゃると思います。   今回は、そのようなDV等被害者が利用できる支援措置についてお話しします。   2 制度の目的 支援措置とは、ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー行為等の加害者...

離婚の基本的な手続きと必要な書類について

離婚の基本的な形は協議離婚といい、夫婦で話し合って離婚届を提出することがこれに当たります。 ただ、調停離婚や裁判離婚の形で離婚した場合でも、離婚届の提出は必要ですし、離婚届の提出と同時に、または、前後して行うべき手続きに大きな違いはありません。 この記事では、離婚の基本的な手続きと必要な書類を確認します。   1.離婚届の入手方法 離婚の手続きというと離婚届を出すだけと考えている方も多いと思います。 では...

DV等被害者への支援措置(住民票等の閲覧制限)2

前回のコラム(詳しくはこちら)に続き、DV等被害者への支援措置についてお話しします。   1 閲覧制限の対象 支援措置によって加害者による閲覧・交付が制限(拒否)されるものは、次のとおりです。   ①住民基本台帳 ②住民票(現住所地) ③住民票除票(前住所地) ④戸籍の附票(現本籍地) ⑤戸籍の附票(前本籍地)   現在の住民票や戸籍の附票...

養育費不払いに対する対応(強制執行)

1 はじめに 前回のコラム(履行勧告、履行命令)はこちらです。   今回は、履行勧告や履行命令によっても義務者が養育費の支払いをしない場合、民事執行法上の強制執行についてお話しします。   強制執行の方法としては、主に、不動産執行、動産執行、債権執行があります。   2 不動産執行 不動産執行は、養育費の義務者名義の不動産(土地、建物)がある場合、執行裁判所への...

離婚・男女問題無料相談ご予約。
まずはお気軽にお問合せください

初回相談無料  03-6424-8328

平日:9:00〜21:00

お問い合わせ